海外を目指した理由とこれから挑戦する方へのアドバイス
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MBAプログラムにおけるクラスの人々
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フィンランドに僕がきた理由は、2つあります。1つは、ITの最先端の研究と、ビジネスを国と民間が協力して起業家をサポートしているフィンランドの事情を研究し、日本が学べる部分を伝え、逆に日本のいいところもフィンランドに伝えていける起業をするため。ただ今、準備中です。
もう一つは、フィンランドの奇跡的な成長力について探ること。90年代初頭、フィンランドの経済はGDPが約10%も落ち、80年代は5%くらいだった失業率は19%まで上昇しました。その破綻寸前の経済から、90年代後半における奇跡的な経済成長を起こし、さらにIT先進国として大きく跳躍した理由を研究するためです。
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ヘルシンキ市内を走るトラム。市内を巡るには大変便利で2ユーロくらい
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海外にいくのは、"ちょっとお引越し"という感覚でいいと思います。一生をかけて海外に移住する時代は終わり、仕事があればどこでもさくっと移動できる状況が整いつつあるからです。海外に行く飛行機の価格は安くなり、日本にあるニュースはネットをみればアクセスできるし、電話もIP電話を使えばほぼ無料。さらに仕事をすすめるときも、ネットミーティングをすれば時差の問題をぬかせば、業務進行には特に問題ないのが現状です。つまり、世界中どこにいても働けるインフラは整ったと思います。
あとは自分の仕事に対する「モチベーション」と「好奇心」がどれだけもてるかなのでしょう。これは、生きていく中での「仕事の出合い」なので、運とかタイミングもあると思います。運良くいい仕事に出合える人もいるし、出合えない人もいるからです。
ただ言えることは、興味があればどんどん活動していくことでしょう。技術よりも、知識よりも、なによりも一番大事なのは「モチベーション」と「好奇心」だと僕は思っています。この2つがあれば、どんな苦労があっても乗り越えようとするし、あくなき成長を求めるからです。技術や経験は、後からつければいいことだからです。なので、なにか興味があったら、ちょっと海外にお引越し感覚で、まず行ってみることだと思います。
僕が始めて海外にいったのは、高校を卒業して、米国大学に留学したときです。高校生の当時は映画の勉強をしたかったのですが、日本だと大学の選択肢が限られてしまいます。そこで、実際に撮影をしている方々が教鞭をとっている米国の大学で勉強したほうがいいのではないかと思い、えいっと留学をきめました。
ただ問題だったのが、英語がまったくできなかったこと。高校3年生まで、赤点ばっかりの生徒でしたので、担当の先生からも「お前、本当に留学するのか? 現実逃避じゃないよな?」とあきられていたくらいです。その状態から、勉強をはじめてなんとか米国の大学に行ったのです。なので"米国で映画制作をしたい"という目的がなければ僕は英語を一生勉強しなかったでしょう(笑)。
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ヘルシンキ・スクール・オブ・エコノミックスはビジネス系に強く、企業とのコラボレーションなどで生徒の育成にも力をいれています
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米国に留学中の4年間、本当に自分の視野が広がったと思います。映画の勉強を通じ、いろいろなことに興味を感じ、世界中を旅行することで経済、文化、芸術、ビジネスに関心をもつようになりました。それもこれも、映画ビジネスに関連している人々の影響を大きく受けているからです。彼らの「好奇心」は本当に鋭く、なんでも気になったことは調べて、納得するまで勉強をしたり、実際に自分で経験しないと満足できない人々でした。自分もその「好奇心」に影響されて、世界約40カ国を自分の足で巡り、本当にいろいろなことを経験したと思います。
以前の職場でマーケティングの仕事に出合ったのも、映画の勉強を通じ、ネット配信などのストリーミング、映像配信システムを知っていたことが縁で、インターネット・コマースサイトの立ち上げ段階から参加できました。そこからビジネスにも興味をもつようになり、現在はMBAを取得するため、切磋琢磨している最中です。
ビジネスを通して、いろいろな方々からも影響を受けています。以前働いていた職場の上司とは、今でもはっきり覚えていますが、採用面接時に海外旅行の話で盛り上がったのです。その人はエベレストのベースキャンプまで登頂を挑んだ人で、話をきいているうちに、"俺もエベレストに上ってみたい"と思い、その場で宣誓したくらいです。実際に2週間の休暇をもらってベースキャンプ登頂をめざしましたが、途中で高山病にかかり、あえなく下山してしまいました。でも、仕事における「いい出会い」だったと思います。
海外には飛行機でちょっと乗ればどこでもいける時代です。リタイヤしてから……なんて言わず、「好奇心」と「モチベーション」がもつ力を信じ、ちょこっとでも行動することこそ、仕事に出合えるきっかけとなると思っています。
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