ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第132回 金子郁容さん

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慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長、教授
金子郁容さん
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よく調べてみると、なかなか面白い
- 金子
SFCの修士学生の調査なんだけど、長野県は長寿の県で、女性が全国1位で沖縄を抜いていて、男性が5位かな。しかも、1人当たりの医療費が全国で一番低いんですよ。医療費が低くて長寿ということで大変注目されていているんです。でもそれは最近のことで、昔は塩分摂取が多い、日照時間が少ないということで、短命だった。
戦後になってからなんだけど、保健補導員という地域組織が形成された。ちょっとおかしな名前なんだけど、地域の主に女性によるボランタリーな組織なんです。そのメンバーがご近所を回って健康相談にのったり、食事の点検をしたり、保健婦さんが来てレクチャーをしたり、いろいろと地域のお世話をするというかお節介をやく。長野県はこの保健補導員ネットワークの組織率が非常に高い。
今までは、それって行政の下働きじゃないかって言われて片付けられていたんだけど、よく調べてみると、なかなか面白い。1年か2年で任期が終わるんだけど、多くの人は「OG」として活動を続ける。つまり、関係者はどんどん増える。保健補導員になる人は、みんなものすごくやる気があって、「私が! 私が!」というのではない。半分、義務感、半分、ボランタリー。
彼女たちは、アメリカ式のボランタリズムを発揮しているのではなく、半ば義務感で行動しているのだけど、行政に対する義務感でなくて、地域コミュニティに対するある種の「おつきあい」という意味での義務感を感じているという。「われこそは」としゃしゃり出るのではないのだけど、やってみると、いろいろな人とつながってゆくのが面白い。人のお世話をして役に立つのが生きがいになる。
また、これまでは、保健補導員は暇な女性の集まりだといわれていたのだけど、調べてみると、案外、有職者が多い。このようなネットワークが、日本の地域の基盤を支えているのではないかと思い始めています。
- 佐々木
もしかしてイー・ウーマンのリーダーズも少し似ているかもしれません。イー・ウーマンのサイトに、円卓会議に参加する以外に、イー・ウーマンと一緒に仕事をしていこうという人たちが、リーダーシップを取るために、リーダーズという登録をしてくれているんです。3000人ぐらいの人がいます。この人たちって85パーセントがフルタイムで働いているんですね。インターネットの調査会社に登録するのは、仕事をしていない人が多い中、イー・ウーマンでは、大学の先生もいれば、現役の医者も研究者もいれば、経営者もいるのです。
しかもこの人たちが、例えば、JALの再生プロジェクトなどイー・ウーマンが受けるコンサルに参加して、一緒にディスカッションしてくれるんです。プロジェクトの意義やコミュニティを良くする、日本経済、企業を良くするということへの純粋な貢献なんですよね。
- 金子
表面上ではなく、底の部分で似ていると思いますよ。ボランティアの人って大体、暇な人ではなく、忙しい人が多いんだよね。
- 佐々木
そうですね。
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