ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第131回 渡辺実さん

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防災・危機管理ジャーナリスト、まちづくり計画研究所所長
渡辺実さん
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ピンクでしたね
- 渡辺
もう、見事でしたね。ミッシングセンターっていう、行方不明者の受付業務をFEMAが支援して開設していました。レッドクロスとか、いわゆる日本的に言えば、ボランティアの人たちが運営しているのだけれども、ハドソン川の埠頭の空いている倉庫を借りとってそのセンターにしたんです。
メディアは中に入れないんですが、僕はこういう仕事をしているからっていうことで、中に入れてもらったら、壁の色から、もう驚くようなデザインがされているんですね。
- 佐々木
それは、明るいっていうことですか?
- 渡辺
淡いピンクでしたね。
- 佐々木
つまり、被災者が避難している場所が、地味な悲しい場所ではないっていうことですか?
- 渡辺
これは要するに、空き倉庫ですから、たぶん日本的に言えば、そういうことをやろうというふうに、たとえば内閣府が考えたときには、そのままですよね。机を置け、コンピューターを入れろ、みたいな話で……。
- 佐々木
でも、アメリカでは、心理学的に色彩がどれだけ被災者の感情に影響を与えるか、ということまで計算されて、きちんと明るい色にペイントされている。
- 渡辺
あとで「あのセンターは、どうやって作られたのか?」というのを調べにもう一回NYへ行ったんですけれども、仰るとおりですよ。倉庫をデザインする際に、ちゃんと心理学者を入れていましたね。それからアニマルコーナーっていうのがあってね。
- 佐々木
アニマルセラピーですね。
- 渡辺
日本的に考えれば、警察が担当する行方不明者を受け付けるだけの場所ですよ、そのミッシングセンターは。リストに行方不明者の名前を書いてもらって、コンピューターにインプットして、「はい、ご苦労さん。また分かったら連絡します」みたいな。たぶん日本だったらそんなもんですよ、どこかの体育館でね。
ところが、そこにそういうアニマルセラピーのコーナーができていて、それから食事のサービスをする。これは赤十字のボランティアがやっていました。要は、そこには、家族が行方不明になっている人たち、必死に探している人たちが訪れる。で、この人たちは当然、中で順番を待ったりするわけですよね。すると本来の業務から言えば、ロスタイムになるんだけれども、しかし、「この人たちは心に傷を負っているんだから、何ができるだろうか?」っていうことを、赤十字が中心になったボランティアの人々が考えたそうです。
- 佐々木
それはやっぱり、被災した瞬間から、人間にできることがある、ということですね。9.11は自然災害ではありませんでしたけれども、災害があって、被災した人たちが行く場所っていうのは、その瞬間から、今度は人間の力でそのダメージを最小限にとどめることができるっていうことですね。そしてアメリカでは、今のお話だけを聞けば、非常に徹底されているっていうことですよね。日本は、「もう起きちゃったことだから、しょうがないから、とりあえず、ここで待っていてください」と、発生後に痛みを最小限にするというところまでは全然考えられていないけれど。何で日本はそれをトップの人が分からないのだろうか? と思います。
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