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防災・危機管理ジャーナリスト、まちづくり計画研究所所長
渡辺実さん
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ある年次を境にして全壊の建物の分布が圧倒的に固まったんです
- 渡辺
阪神の震災の時、我々はサンプル調査ではダメだ、ということで「全数」というテーマを持ってさまざまな調査をしたんですね。なぜなら、それまでは大都市が被災をしたデータは、大正12年の関東地震の係数しか、僕らは持っていなかったんですね。いわゆる近代都市があれだけの被災をしたっていう経験はなかったわけです。ですから建物も全部調べたんですよね。被災した建物も、亡くなった方も、全部調べたんです。つまり普通はサンプルで調査するんだけれども、これは全数をやらないと係数を作れないっていうことで、出火の原因も全数調べました。で、新しい被害想定という手法の、新しい係数を、あの震災から僕らはいただけたんです。
で、その中でいろんなことが分かったんですが、グラフにすると何より顕著に現れたのが、これは木造もRC造も含めて、ある年次を境にして全壊の建物の分布が圧倒的に固まったんです。それが昭和56年、1981年。で、その年は何かというと、新耐震基準に変わった年なんですね。
- 佐々木
じゃあ、それより前に建てられた建物には全壊が多い、と。
- 渡辺
ほとんどすべてが全壊。
- 佐々木
ほとんどすべて!
- 渡辺
それから今取り掛かっているテーマがラジオ。実は「災害時はラジオがライフラインだ」って僕らは言ってきたし、ラジオ局も頑張ってくれていたんだけど、最近建てられているマンションは家の中でラジオが聞こえないっていう事態が起きているんですよね。
- 佐々木
電波が入らないんですね。
- 渡辺
超高層になって気密性が高いから。
- 佐々木
「高層難民」と仰っていますよね。
- 渡辺
そう。イー・ウーマンの円卓会議でもこの前取り上げましたよね。ものすごく多くの人が興味を持ってくれて、あのテーマで連日1位になったのには驚きましたね。で、「高層難民」あるいは「ラジオ難民」というのを、この間の民放連(日本民間放送連盟)の報道研修会でもラジオの連中に言ったんです。携帯電話は、不動産会社が売るときにマイナス要因になるから、再送信して、アンテナを設置していて、どこに行ってもつながるっていうふうになっている建物もあります。ところが、ラジオなんて、そんなことを不動産会社は全く考えてもくれていない。するとラジオ難民というのが起きて、今度は放送する側にも、「本当に災害時にラジオはライフラインになれるのか?」っていうテーマがある。
これは、そういう難聴エリアがいっぱいあるよ、ということではなくて、要するに、これだけ多メディアになっていて、ラジオが聞かれなくなって、持たれていなくて、そんな現状の中で、平気で「ラジオが災害時のライフラインだ」なんて言っていていいのか、という話なんです。
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