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防災・危機管理ジャーナリスト、まちづくり計画研究所所長
渡辺実さん
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一つひとつのオペレーションの根底にその価値観がある
- 渡辺
もう一つ深く考えなければならないのは、社会背景が、日本って単一民族じゃないですか。まあ、異論はあるかもしれないけれども、多くが「日本人」ですよね。ところがアメリカの社会っていろんな人種が入っていますから、そこに公平性みたいなことを、どうしても彼らは、ものの価値観のの重要なポイントとして置いていますよね。
- 佐々木
どうやったらフェアで、どうやったら多様性を受け入れられるかと。
- 渡辺
「絶対に差別をしてはいけない」という、僕ら日本人から見ると、もう異常なまでに、そこの部分に気を使いますよね。いろんな一つひとつのオペレーションの根底にその価値観があるっていうことです。
それからもう一つは、筑紫さんとずっと議論していたことなんだけれども、日本人は宗教っていうのが背景にないという話です。ボランティアの背景の話を議論していても、行きつくところは、やっぱり日曜日に教会に行って、その後に町へ出てホームレスのミールサービスを、まさにボランティア活動をして、それから町を掃除する。親がやっていることを、子どもが親の背中を見て育っているっていう基本的な価値観があるから、たとえニューヨークのテロであっても、カリフォルニアからたくさんの人が支援に行く。その根底っていうのは、残念ながら日本人の文化や意識の中にはないかなって。これは結論は分からないんだけれども。
- 佐々木
いや、いろんなテーマでいろんな方とお話するときに、やっぱりキリスト教っていうのが出てくることが多々あります。日常の生活の中に、「貢献する」とか「奉仕する」っていう考え方が小さなときから身についている人が多いっていうことですよね。
それから、心理学の存在感の違いもありませんか。日本って、心理学者とか精神的なセラピーみたいなものの立場が非常にまだマイノリティーですね。先ほどのピンクにするとか、アニマルセラピーっていうのも、知っている人や関心がある人の世界では、もう長くあるものですが、一般的にはまだマイノリティーで、そこに予算を使うとか専門家を置くっていうことの重要性が、「おにぎりを運ぶ人と、アニマルセラピーの人と、どっちか?」と言ったときに、同じにはなれないのではないでしょうか。
ここもアメリカでは心理的なところへの配慮っていうんでしょうか、学問的にもプロフェッショナリズムとしても、サポートするということが非常に重要視されていると思うんですよね。
- 渡辺
日本ではやっと、じゃないかな、災害という世界の中で、メンタルな部分がクローズアップされて、いわゆる精神科の先生やカウンセラーの方々が入れるようになったのは。
- 佐々木
そうですね。現地には入るようになりましたよね。
- 渡辺
それはやっぱり日本の社会の中で、残念ながら根底に精神科に対する偏見がまだあるから、なかなか……。災害なんて、物理的・経済的な支援よりも、心に大きな傷を負っている人たちが、そこから立ち直っていくことをどうやってサポートできるかっていうのが実は一番大事なことだっていうことなんだけど。昔から僕らがアメリカの災害を見ていると、そこのカウンセラーっていうのが、常に避難所の中をうろうろしていて、声をかけていくし、ああいうのを見ていて、「やっぱりそこだよな、ポイントは」って。でも日本の中に持ち込んでみても、相談する相手は「精神科の先生」になっちゃう。
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