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金平 敬之助さん
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切り札は、人柄
- 金平
失礼ですけどね、佐々木社長さんのように民間企業のリーダーは、人の集まりをまとめる点では楽なのです。大変なのは、ボランティア活動のリーダーや公立学校の校長先生。とくに日本人学校の校長先生は大変です。
日本人学校を例にとりましょう。まず人数が少ないでしょう。 5〜6人。ネイティブの先生を入れて7人ぐらい。だから、人間関係が難しい。そのうえ、人事権がない。しかも、一杯飲ませるお金もない。それに、部下は毎日子どもに言い聞かせている人たちです。言い聞かされるのが苦手な人たちです。さらに、出世願望はあまりない人たち。で、昇進昇格でやる気をアップすることもできない。給料も差はないでしょう。新人を入れて刺激することもできないでしょう。
しかも、3年で交替なんですよ、海外勤務は。帰国すればバラバラになっちゃうわけですよ。同じ県に帰ってくるんだったら、また校長先生として仕えるかも知れませんが、滅多にないでしょう。こんな人たちをまとめて一つの方向へ持っていくとしたら、何を切り札にしたらいいのでしょうか。
私は、日本人学校に赴任する直前の校長先生にリーダーの心得を話したことがあります。5年ぐらい続けました。そのとき、「リーダーとしての切り札は結局皆さんの人柄しかないですよ。その人柄を具体的に表すには、やっぱり一人ひとりの先生の性格、経験、家庭状況、趣味に悪意のない関心を寄せ、その身に心を行き届かせ、言葉を行き届かせることが大切です」と言います。
家庭でも同じです。夫婦は、お互いに相手の身に心と言葉を行き届かせないとうまくいきません。私は『「肉ジャガがいい」は魔法の言葉です』という本を書きました。「朝、出掛けるときに、奥さんから『夕食、何がいい?』と聞かれる。このとき『何でもいいよ』と言っているようでは夫婦仲はうまくいきません。学校の先生、職場のリーダーだったらすぐお辞めになってください」といった内容の本です。
「夕食、何がいい?」って聞かれたら、「献立で毎日苦労しているんだな。たまには一緒になって考えてあげなくては」と思いやる。これが、相手の身に心を行き届かせることなんですね。でも、心だけじゃいけない。言葉も行き届かせなくてはいけない。そこで、「いま、新ジャガのシーズン。肉ジャガがいいね。キミの作ってくれる肉ジャガが大好物。楽しみに早く帰ってくるから」と言ってあげる。
「妻に、こういう心遣いができない人が、何で子どもを教育できるんですか? 部下をリードできるんですか?」私は、真剣にこう思っているんですよ。
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