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金平 敬之助さん
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先生を尊敬しましょう
- 金平
私は公立学校の先生方に話をする機会がよくあるのですよ。いままでに本を17冊出していて、一番売れたのが最初に出した『ことばのご馳走』という本なのですが、最初から4冊目ぐらいに『舞台をつくりなさい』という本を出した頃、文部省(文科省)の役人の方が、この本を気に入ってくださって。それで中学の進路指導の先生や校長先生などに講演させていただいたのです。でも、民間人の私が校長先生に何を話していいか分からないでしょ?
実は先生にも「風景論」を中心に話をしています。「学校の風景がよくなれば、よい子が育ちます」と訴えています。それ以来、何だか知らないのですけれど、学校の先生方にお話しする機会が増えました。おそらく民間の人間で、学校の先生にこれだけしゃべっている人は少ないのではないかと思っています。
- 佐々木
最近は、いじめや自殺、履修問題など、学校の風景が変わってきているように思うのですが、どう思われますか。
- 金平
私は、本の中で学校の先生のことをよく書きます。で、ある大学の教授が私の本を読んで「君はよく学校の先生のことを書くけれど、一つ特徴があるね」と言うのです。「何ですか?」って聞いたら、「先生の悪口を書いていないね」と指摘するのです。そう言われればそうなんです。たしかに悪口を書いてないのです。
悪口を書いていない理由は二つあります。私の周りにいる学校の先生たちが皆本当に優秀だということ。もう、頭が下がる人たちばっかりで、悪口を書きようがないのです。
もう一つの理由はフィンランドです。フィンランドはご存知のように国際比較で生徒の成績がたいへん優秀な国です。なぜ成績がいいのか。それは若い優秀な人が先生になりたがるから、というのです。優秀な先生の下に優秀な子が育つのは当たり前のことです。では、なぜ優秀な人材が学校に集まるか、というと、社会が先生を尊敬しているかららしい。フィンランドでは先生は憧れの職業になっているのですね。だから、教育の問題は実はわれわれがまず先生を尊敬し、世間が憧れる職業にすることが大切なのではないでしょうか。
だから、私一人でも絶対先生の悪口は言うまいと心に決めているのです。これが私が先生のことを悪く書かない理由です。そして、いま世間を騒がしている、いじめ、自殺問題なども学校や文部科学省だけを攻撃してもしょうがないのです。その前に、私たちがまず先生を尊敬することから始めなくてはいけないのではないでしょうか。まさに教育問題は「もとは我々にあり」と考えるべきです。
- 佐々木
同感です。先生を尊敬するというのは、私もとっても大切なことだと思っています。先生も人間ですから、褒めてくれて、尊敬してくれる環境なら、やる気も出るでしょう。私は、子育てをするときに、子どもたちの先生を尊敬し、大切にすることを基本にしています。
- 金平
フィンランドの中学の校長先生の話をニューヨーク・タイムズの記事で読んだことがあります。「子どもたちに『将来、何になりたいか?』と聞くと、毎年トップは教師だ」と言うのです。私はここから教育問題はスタートすると思っているのですが……。
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