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関根千佳さん
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ユニバーサルデザインは「思いやり」
- 佐々木
メーカーが自社でユニバーサルデザインを考えられるように成長してきた今、学生や研究者にユニバーサルデザインのコンセプトを理解してもらうという仕事は、半永久的にあるすごくいい仕事。
- 関根
企業の方からも、「社員全体にユーザーニーズを重視する教育はすごく大変」って聞いていたんです。 1年間かけて社員を教育するなどというのも、いろいろな企業さんでやっていただいているんですけど、入ってくる学生が何もわかってないんだよね、っていう声が上がります。これは学生さんからやらなきゃいけないなと思ったので、この小説を書いたんです。
- 佐々木
大学だけでなく、高校、中学、小学校にも、ぜひユニバーサルデザインの話はして欲しいですね。わが娘は4年生のとき学校で、バリアフリーとユニバーサルデザインの違いを学び、その上で、アイマスクをして歩く視覚障害の人の疑似体験や、特殊なゴーグルをして高齢者の視野を体験したり、重いベストを着て妊婦の体を体験したりなどしたようです。
- 関根
ま、この物語そのものは、ユニバーサルデザインのための本というよりは、技術者が人間を理解するための本、なんですけどね。それに、理科離れを解消して、科学って、人の役に立っておもしろい仕事なんだよね、っていうのが子どもたちに浸透してくれば、また違うかなっていう気もするので……。人間を幸福にすることのできる科学技術とは、が最大のテーマです。
- 佐々木
小さいうちから、繰り返し、ユニバーサルデザインという考えに触れることで、生活の中での基本的な思いやり、気配りも身につくんでしょうね。結局はユニバーサルデザインって、思いやりっていうようなことじゃないですか。
- 関根
そうですね。
- 佐々木
だから、自分が使えればいいじゃなくて、あの人にも使えるかとか、あの人だったらどうかしら、あのおばあちゃんはどうだろう、あのおじいちゃんはどうだろう、って想像するっていうことが、結局は最終的にボタンの大きさに反映されなくても、仮に担当じゃない人でも、そのユニバーサルデザインのコンセプトを理解するって教育上、重要なことですよね。
- 関根
そうなんです。今、おっしゃったとおりです。私はよく講演で「一回でいいから、ちょっと立ち止ってください。そしてあなたの作っているその製品や、あなたの会社の広報誌やカタログも、それはいろんな人に読めますか、使えると思いますか、っていうのを一瞬、考えてください。それだけで、少しずつ絶対に良くなりますから」っていうメッセージを話すんですけど、同じことなんですよ。
- 佐々木
本当ですよね。
- 関根
それを子どもの時からやっていれば、たとえば街の中でいろんな人に触れた時に、ジロジロ見るだけじゃなくて、海外のようにものすごく気楽に「May I help you?」って言える子どもが育つかもしれないじゃないですか。
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