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松本 侑子さん
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プロとして生き残ることの大変さ
- 松本
最近、メジャーデビューしてないバンドを応援しているんです。
- 佐々木
バンドをわたしに語らせたら……(笑)。
- 松本
そうだ、かをりちゃんは詳しいんだった(笑)。わたしは、そのバンドが路上ライブや都内のライブハウスに出る時はほとんど見に行ってます。
- 佐々木
いくつくらいの人?
- 松本
20代後半で、これが昨日のライブの写真(笑)(デジカメ写真を見せる)。以前、渋谷をたまたま歩いていたら彼らが演奏していて、曲がよかったの。きれいなメロディといい歌詞がある。デビュー前ですが、初めてコンピレーションCDも出たんです。
なぜ応援しているのかというと、初心に戻らせてくれるんです。彼らには夢と野心があって、昼は働いて、バンド活動もして、一生懸命に、でも楽しそうにやっている。
- 佐々木
そういった路上のバンドを見ていて、彼らに、松本侑子です、って言うの?
- 松本
まだ言ってないの(笑)。
- 佐々木
名乗らないで写真を撮って、話し掛けてるの?
- 松本
今は「頑張ってくださいね」って言うくらいで。何だかおかあさんみたいですね(笑)。
- 佐々木
彼らにしてみれば、何か美しいお姉さんがいつも来てるな、って思ってるんじゃないですか。
- 松本
いやどうだか……(笑)。彼らにとっては、「メジャーデビューする」のが目標なんです。
わたしも昔は、小説家として本を出したいという夢があって、彼らと同じ段階にいた。20代のころ、本を出すことが大きな目標だったけれど、だんだん目の前の仕事に追われて、あのころの切実な夢を忘れてしまう。それが彼らを見ると、初心に戻れるんです。
もう一つは、生き残る厳しさを、あらためて感じるんです。作家もミュージシャンも、デビューした後、消えていく人が少なくない。会社を立ち上げたり、デビューしたりするのは、ある程度は誰にでもできるんです。でも、どうやって生き残ってゆくか、そのほうがずっと大変なんだということを、あらためて実感するんです。
彼らに「頑張ってくださいね」と応援しながら、「わたしもがんばらなければいけない、プロの仕事をしなければならない」と強く思うんです。
- 佐々木
うん。ちゃんと自分に当てはめてみてるんですよね。で、プロの仕事とはどういうことですか?
- 松本
お金を払っていただいた対価として、それだけの価値があるものを提供することです。小説は心の世界ですから、必ずしもお金では換算できませんが、これを買って読んでよかったと思っていただける本を読者の方にお届けしたいと思います。
だからプロを目指しているバンドを見ると、ジャンルは違っても、「わたしも自作の欠点を見つけて、読み手の立場にたって、きちんと書き直しをしなければ」とインスパイアされるんです。ところで、かをりちゃんもバンドの応援をしていたんですか? わたしは生まれて初めてなんですけど楽しいですね。
- 佐々木
高校生のころですけれどね(笑)。ただ、わたしは、追っかけするなら目標をきっちり作って成果を出しなさいっていうほうなので、道端で「キャー」って言って騒いでる人の気が知れないっていう感じです(笑)。友だちになるとか人生に役に立つ体験をしなさいという主義なの。
- 松本
わたしも「キャー」とは言いませんよ(笑)、この年ですからね、彼らも迷惑ですよ(笑)。
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