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松本 侑子さん
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転職のススメ
- 佐々木
自分の生き方を他の人には強制しないけどっておっしゃったんですが、今、イー・ウーマンに集まる、20代、30代、40代の女性たちで、仕事をしたい、でも思うように働けない、と感じている人もたくさんいるんです。
中には「この仕事が向かない」とか「やりたいことがわからない」と言いながら転職を続けていったり、「したい仕事が見つからない」と言って悩んだり。そういう人はどうすればいいでしょう?
- 松本
わたしも最初に勤めたテレビ局で、映像の才能のなさに悩んで、転職しましたから、その気持ちはわかります。転職はいいと思いますよ。わたしも転職して、天職を見つけたんです(笑)。
でも一つの会社に、最低3年はいたほうがいいと思います。どこの会社も1年間の業務サイクルがあると思うんです。1年目は、何がなんだかわからなくても、2 年目は「ああ、そうか、去年もこの時期にこれをしたな」と気が付いて、自分の仕事の職場での位置、全体像が見えてくる。3年目は少し余裕もできて、後輩に指示もできるようになる。
3年間きちんと働いた経験と実績があると、次の職場に行っても必ず役に立つんです。財務管理、接客、営業、企画、事務、何でもいいから3年続ければ、一通りの経験はできます。それが次の力になるんです。わたしがテレビ局で話し方を学んだように。
- 佐々木
「この仕事に向かない」という話をよく聞くんですが、わたしにはその意味がよくわからないんだけど(笑)。
- 松本
最初の1年くらいでは、向いているか不向きか、わからないと思います。その意味でも、最低3年は一生懸命やった方がいいんです。そうしないと結局は、何も身に付かないと思います。
- 佐々木
そうですね。どこ行っても同じなんでしょうね。
- 松本
どこへ行っても経験が身に付かず、自分の能力を伸ばせない。
- 佐々木
そうすると「一生懸命」がキーワードになるんでしょうか。だらだらとした3年じゃなく。
- 松本
「わたしはここでこれをやりました」「こういう技能を身に付けました」と、自信を持って言えるような何か、コツでもいいし、数字で示せる実績でもいいし、そういうものを得た上で会社を変わるのはいいと思うんですよ。そうすれば会社は違っても、能力を活かせます。自分の力をさらに発揮できる職場、待遇を求めての転職はいいと思うんです。
- 佐々木
なるほどね。
- 松本
わたしの友だちにも、何年かおきに転職している女性がいます。コンサルティング会社にいて、米国のレコード会社で社長の経営アドバイザーをやって、時計メーカーに行って30代で部長、部下が50代の男性という中で実績をあげて、今は外車の会社にいます。
彼女のように有能で高収入の人でも、最初は向いてるとは言わない。むしろ移ってすぐは、つらい、苦しいっていうメールが来ます。でもそれを乗り越えている。あんなに立派な女性でも、最初から向いてる仕事はないんだと思うと、きっと誰でもそうなんですよね。
- 佐々木
そうですよね。
- 松本
今のわたしは転職はしませんが、小説を十数回も書き直して、付け加えたり削ったりをくり返していると、だんだん辛くなってきて、翻訳で気分を変えます(笑)。
小説を書くということは、主人公の過去から現在までの歴史も、家庭も職場も全てを無から作らないといけない。面白いけど大変なんです。その点、翻訳は、すでにでき上がっている作品をいかにうまく読みこなして、原作者の意図、情感、風景をうまく表現する言葉で訳していくかという仕事で、小説の味わい方や解釈、文章上の問題なので、無から作る苦しみはない。
でも翻訳だけしていると、今度は自分の物語が作りたくなって、また小説を書く(笑)。わたしは前向きの転職は、いいことだと思います。むしろ安穏と「自分は定年までここに雇ってもらえるんだ」と気を抜いている人は残念です。
- 佐々木
そうですね。
- 松本
同じ職場でも、能力を開拓していただきたいですね。そして転職も、能力を伸ばす転職は、前向きなチャレンジだと思います。かをりちゃんみたいに新しい会社をつくる転職もすばらしいですね。
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