ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第37回 石井苗子さん

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石井苗子さん
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死に物狂いの東大受験
- 石井
聖路加看護大学は卒業するとみんな看護師と保健師の資格を取るの。この年であーんなにつらい思いするとは思わなかった。受けなくてもいいだろう国家試験なんてと思ってたら、聖路加は100%の合格率、就職率って言われちゃって。
- 佐々木
100%!?
- 石井
そんな規則はないんだろうけどね。でも「どうしますか?」って聞かれるのよ。聖路加の先生は礼儀正しくて、品行方正で、厳しくて、あったかくて。ね、こーんな嫌な人たちいないじゃないのよね〜。
芸能界なら「どいつもこいつもかかって来い!」なんて強がるんだけど、クリスチャンのシスター先生だったりすると、もうコチコチに固まっちゃって。「はい、受験するつもりでおります」なんてね(笑)。つい言っちゃったから死に物狂い。
聖路加を卒業したら放っておいてくれるのかと思ったら、「今後どうしますか」って、なかなか解放してくれないの。
東大の過去10年の大学院受験問題を全部網羅したものをやることになって「それって紀伊國屋書店で売ってるんですか?」なんて言っちゃったら、「売ってません。東京大学でコピーしてらっしゃい」って。けえ〜!って思って下級生にちょっとやってきてって頼んじゃった。みんないい子でさ、「石井さんコピーはいいですけど勉強するのは石井さんですからね、わたしじゃありませんからね、アーメン」とか言われたけど。
その頃『ショムニ』っていうドラマで、明け方まで撮影なんて日もあって。その時は優しい学生がさ、ノートとっておいてくれたり、撮影現場に「大丈夫、大丈夫」って電話してくれたりして。ある日なんか、大学の正門前に駐車したまま車の中で足上げて寝てたら、授業、寝過ごしちゃったの。先生に見つかって「大学にあるベッドで寝なさい」って……。そこまで恥かいたこともある。
- 佐々木
短期集中の猛勉強、ですね。
- 石井
大学院の受験って時期が早いのね。そんなことも知らなくて。ちょうどドラマで殺され役やってた頃で、確か後ろから頭たたかれて死ぬ役だったな。で死んで横になりながら「えーっと……」なんておしりの下からさっきのコピー出して。スタッフに「石井さん、それ台本じゃないですね」って注意されたりして、そんな感じで勉強してた。
- 佐々木
撮影中まで?
- 石井
だって間に合わないんだもん。で、東大の試験場がさ、絶対カンニングできないように座らせるの。開始まで机とかに細工しないように立って、合図で初めて座るんだけど、わたしのいすが壊れてて、座ったとたんにずっこけちゃったの。もうすべってる、信じられない!って。問題は100問ぐらいあったかな。これは答えられるというのだけ先にやったら、6問しかない。もう駄目だと思った。
- 佐々木
でも、受かった。
- 石井
合格発表に行く気がなかったから「電話で結果、教えてくれますか?」ていったら、「そんなことしておりません」って。当たり前だよね。それで家族がね、行くのやめろっていうのよ。落ちてたらまた何か言われるんだから、マネージャーか誰かに見に行ってもらえばいいじゃん。週刊誌の記者がいるかもしれないし、みっともないよって。でもそう言われて決心したの。
念入りにメイクしてオープンカーで行ったわよ。落ちたときみっともなくないようにさ。番号があったから下向いて帰ってきた。記者なんて、いないし。
- 佐々木
おかしい。でもすごくうれしかったでしょ?
- 石井
正直ね、うれしかったのは半分。どうしよう、ついていけなかったらっていうのが半分。学校が始まったら本当に、ついていけなかったし。
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