ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第37回 石井苗子さん

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石井苗子さん
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「人間どうなるかわからない」。わたしはその生き証人
- 佐々木
映画出演のきっかけは、何だったんです?
- 石井
90年に伊丹十三さんが映画を撮るのでアメリカからスタッフを呼んだとき、通訳をしたのがきっかけ。『ビートたけしのTVテレビタックル』も同じ時期だったと思う。声だけの出演。こういう声じゃない。たけしさんはずっと『CBSドキュメント』のわたしだって気づかなかったみたい。あの番組はよく見てらしたみたいだけど。
伊丹さんは、映画『あげまん』の脚本をご自分で書きながら、女優を探していたらしく「あの通訳してた女性で、ボサーッとしてた人いたでしょ、半分コメディーが入っているような人。ああいうの探してきてよ」って言ってたらしくて。なかなかいなくて、「じゃ、本人呼んでみましょう」って電話がきて「遊びにきなさい」って。水ようかん持って遊びに行きました。
生まれて初めて台本を渡されてさ。「ちょっと13ページ読んでみて」ってその日に言われたの。で、13ページ1行目のト書きから読んじゃった。「英子が階段上って右を向く」。そしたら「それはぼくたちがやるとこ。カッコの中を読んでもらえます?」って。そんな感じ。それ読んでリハーサルっていきなり連れてかれた。
- 佐々木
でも、読んでって言われた時は、やっぱりこれは試されてるんだって感じたわけでしょう? 何かが起こりそうな予感とか。
- 石井
思わなかった。試されてる意識があったらカッコの中を読むもんね。
- 佐々木
そうか(笑)。でも、カッコ内を読んでくれって言われたら、わたしだったら試されてるんだって思って、演技しなきゃいけないのかなあ、とかいろいろ考えてしまいそう。
- 石井
読んだ後で、「あなたは演劇の素養はありますか?」って聞かれて「ありません」って言ったら、「じゃあちょっと」とか言って、ライトがあるところに連れてかれた。そんときは、さすがのばかでも「これは何かの試験かも」って思った。これがカメリハかって。やっと緊張したなあ。
演技の部分で「大女、エレベーターのドアからドカドカと駆け込んでくる」っていうのがあって。毛皮のコート着て「駆け込んでくる」。いくらわたしでも真っ白になっちゃって。駄目だ、駄目だって。ゾーって感じで。でもね。合格した理由ってのが……。
- 佐々木
うんうん。
- 石井
ドタドタっていうところでヒールがエレベーター出口の溝にはさまっちゃったのよ。運がいいんだか悪いんだか。それで「オーケーでーす!」のあとに、「石井さん今のは演技? それとも偶然ですか」って監督に聞かれて。わたし黙っちゃったんだけど、「まあいいや答えなくても」って言われて。1週間くらい何にも連絡なくて、電話がきたときには正式にプロデューサーから依頼されて、びっくりした。物事は、決まるときは速いのよね。
1本でやめるつもりだったから誰にも何も言わなかった。で終わったときに伊丹さんに「僕は3年に1本ぐらいしかつくらない監督だから女優さんを保証してあげることができないけど、あなた、やってもいいんじゃない」って言われた。駄目な人には駄目っていう監督だったらしい。けど「あなたはおもしろい、コメディアンだ」って言われたのよぉ。なのに、シリアスな役とか悪役ばっかりくるのよね、『CBSドキュメント』のおかげで。CBSの後遺症とるのに10年もかかっちゃった。
- 佐々木
確かに『CBSドキュメント』で、わたしも硬派なイメージになってるような気がします……。イメージだけど。でも、『あげまん』は、本当に鮮烈だった。良かったよね。石井さんらしさもすごく良く出てて。
- 石井
やっぱり女優はおもしろい職業ですね。志願者も多いけど、わたしには合ってるみたい。
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