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渡辺邦昭さん
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翻訳じゃなくて、実は自分で書いた本なんです
渡辺
そうなんです。今朝もね、お正月休みにお読みになられたある会社の方が、「感激しました。ついては原書で読みたいので、原書の入手方法を教えてください」とメールがありました。そこまで言われちゃうと本当のことを言うしかないよね(笑)。
佐々木
監訳と書いてあるんですから、実は渡辺さんが著者だなんて考えつきませんよね。自分で書いたと言えない恥ずかしがり屋、なのでしょうか(笑)?
それにしても、このストーリー、エピソードなどは何を基本に考えられたのですか。営業で活躍しているやり手のジャックが突然の解雇。カウンセリングを受けながら、自分の内側を探求していき、最後に自分の望む仕事に出会うわけですが、その流れが非常に今の時代に合っている。
それと、メインのストーリーと離れますが、たとえば主人公のジャックと妻の会話がいいですね。ジャックの悩みや心の変化に、妻は抵抗しながらもどんどんと吸収していく。夫の成長、思考の変化に妻も対応していく。このコミュニケーション能力はすごいなあという所も、惹かれました(笑)。
渡辺
アメリカ人の夫婦と日本人の夫婦っていうのは、ずいぶん違いますよね。
佐々木
そうですよね。やっぱり根本がコミュニケーション。コミュニケーションというのはさまざまなレベルがあって、今自分は何が欲しいのかということを具体化し、言葉にして、それをまず自分に伝える。
その次に、それを周りの人に伝えていく。周りの聞いている人も、一度それをリピートして理解していく。こんなプロセスが基本だし、必要なことだと思うのですが、会社でも、家庭の中でもできていない人が多いと思います。それがこの本の中ですごく基本的に、日常的にさらりと出てきている。
渡辺
それはすばらしいポイントです。実は、僕が言いたいことの一つはそれなんです。日本の社会ってご存知のとおり、「寸鉄人を刺す」とか「腹芸」とか、そういう価値観があるじゃないですか。
木登りの名人の話があります。自分は先生だから登らずに、弟子が高い木に登るのを見ているわけです。弟子が落ちそうなのを先生は注意せず、そのうち木登りの一番難しいところも過ぎて、あと地面まで2メートルぐらいになった時に、先生が「落ちないように気を付けろよ」と一言注意するんです。
最後に気を抜くから、そこのところでもう一度気を引き締めて気を付けなさい、高いところにいる時は誰でも注意しているんだよ、ということを一言で表す。そういうところに日本の文化の原点があると思っているんですね。
たとえば毎晩食事が終わって、テレビを見ながらコーヒーを飲むとき。日本人の夫婦の場合、ミルクをどれだけ入れて、砂糖を何杯入れて、というのが全部わかっていて、「おい、コーヒー」と言うと、夫の好みの味のコーヒーが出てくる。アメリカ人の夫婦の場合、「コーヒーを入れて」と言った瞬間に、必ず “Sugar and milk?”“How much?”と聞くというよね。
30年夫婦をやっていたとしても。それがアメリカ人のコミュニケーションの原点なんでしょうねえ。でも僕らはそうじゃない。それって悪いところもたくさんあるけどいいところもある。アメリカ人の人たちと一緒に仕事をしていると、すごくそう感じる。それをこの本の中に書いたんです。
佐々木
それでジャックは原点に戻っていくじゃないですか。自分で考え、妻に理解され、一番幸せなところに行き着く。自分の存在意義が明確になり、やりたい仕事を作り出すところに。今のキャリアクエストクラブの研修では、この本を教科書として使っているとか?
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