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川本裕子さん
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日本を引き継いでいく責任感
- 川本
もう一つが、その「未来責任」です。日本は、人口が減り続けていますよね。今年生まれた赤ちゃんが50歳になる時には、日本の人口が9,000万人を下回るといいます。まさに毎年、50−100万人の都市が、一つずつ消えています。
- 佐々木
それは、ものすごくわかりやすいし、衝撃的です。
- 川本
それに加えて、高齢者は増えていくわけですから、社会保障の面で日本の将来には不安が投げかけられています。その状態で、日本は世界をリードする繁栄する国家でいられるか、私たちはどうしたらいいのか、という問題があるわけです。でも、長い歴史の中で見れば、今起きていることは、一つのエピソードであり、不可避と受け入れてしまうことはないと思うんです。
- 佐々木
もっと長い時間軸でみたらいい、ということですか。
- 川本
そう。少子化対策に本格的に取り組めば、日本の人口がまた拡大することだって大いにあると思う。100年後、200年後に生まれてくる世代に、日本を引き継いでいく責任感こそが、政策を議論していく上で大切なことだし、日本の盛衰を左右すると思うんです。第2次大戦から1970年代までのイギリスを思いだしてみたら、わかります。
産業の国有化や、過剰な福祉国家といったモデルの追及で経済は疲弊し、通貨危機にも陥って、「不治の病」と喧伝されたでしょう。でも70年代からは、30年間を経たイギリスは、ベンチャー投資も急速に拡大し、経済が若々しくなった。佐々木さんは、「リトルダンサー」という映画、観ました?
- 佐々木
観ました。とてもいい映画でした。ダンサーを目指すイギリスの少年の話ですね。
- 川本
あの主人公のビリーが才能を開花できたのも変革のおかげだと思うのです。サッチャー改革が失敗だという人は、あの映画を観てほしい。イギリスの変化っていうのは、社会を覆っていた悲観主義からの克服なんですよね。市場競争や民営化の拡大で、政府次第で国の成長力が変わることを国民が知った。その国民からの強い支持を背景に、強い政治のリーダーシップ、意志力が発揮された、ということです。
- 佐々木
それは、日本ももっと、意志を持たなくては、ということですか。
- 川本
今の政治への参政権をもつ世代の人たちが、自分の生涯期間の社会保障などの受益を重視して、今は決定に参加していない将来世代への負担を過小評価することは十分あり得ます。未来責任はそれほどやさしい話ではありません。
- 佐々木
決定に参加できる私たちが、自分のことばかりでなく、投票権を持たない若い子どもたちの将来を考えて、政策を選ぶことが大切、ということですね。
- 川本
その通りです。未来の世代への責任を果たす意思は、人々の合理性と、英知に期待するしかない。既存権益と密接に絡む「土建国家」から、少子化対策や教育への投資などをつうじて、未来の世代を育てる「人づくり国家」への国家ビジョンの転換が、新政権にできるのか、問われていると思います。
13/20
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