ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第137回 川本裕子さん

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川本裕子さん
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客観的なビューを持つ
- 佐々木
それって、すごくメディアの役割も大きいと思うんです。人々をどんな気持ちにしていくか、という意味でも。メディア自身も自民党派というか、自民党に育ててもらった記者がいっぱいいるでしょうし。新聞やテレビのプロデューサーなり編集長なり、トップの人達が、新しい記者が取材してくることを信頼し掲載するということをリスクを取ってやっていかなければならなくて、昔のあの人が言った評論、というのだけを載せ続けたら、皆自民党寄りになるかもしれないということですね。
- 川本
だから、メディアがより客観的な、本来のあるべき姿になる。
- 佐々木
そうですよね。それは、できますか? 国民が政権を選ぶ以上に、メディアの変革は難しそうに思います。
- 川本
とても厳しいと思う。でも、やってもらわないと、ということですよね。それでこそ日本の思考力が鍛えられるんだと思うのですね。民主党議員の方たちのHPを拝見すると、考え方や政策がいろいろと書いてある。これまで野党だったのでなかなか報道されない分、ご自分たちのブログを充実させて考えを伝えようとしている。これからはこういうネットの情報がますます大事になりますよね。
- 佐々木
川本さんが海外のいろんな政治をご覧になる中で、日本の国民の思考力はやっぱり弱いですか?
- 川本
印象ですが、私が住んだイギリスでもフランスでも自分の意見を持っている人が圧倒的に多いですよね。だから、日本でも知識層というべき人々がもっと訓練されていくべきだと思う。自分の頭できっちり考え、議論をしてよりよいものを創り出していく習慣が第一歩かしら。「なんとなく」とか「よくわかんないけど」とか言ってないで。あるいは、イー・ウーマンに参加しているような人達の層が増えていったらいいのでしょう。
- 佐々木
もっと増えて、鍛えられないといけない、ということですよね。イー・ウーマンでは、ちなみに知的訓練のためにも、「働く人の円卓会議」を毎日展開しているんです。6ジャンル、6人の分野の専門家が質問を投げかけるのですが、そこに答えるときの投稿ルールがあって、“I statement”という定義で、自分の意見に限定して書きなさい、と。だから、今まさに仰った「マイビューを持つ」ということなんです。
たとえば「中小企業なら皆喜んでいると思います」という投稿はサイト掲載されず、「私は中小企業のオーナーですが、とてもうれしいです」はいい、と。“I statement”で書かれたものだったら、多様な意見を掲載します、というルールでやっているんです。
多様な視点がテーブルに載る社会になるように、まずは個人の思考、発言レベル、ディスカッションレベルを上げようというのが、「働く人の円卓会議」の一つの主旨なんです。
- 川本
なるほど。人々と、鏡の関係かもしれませんけれども、やっぱりメディアの分析力が、海外と日本ではものすごく違うと思うのね。海外の記者は、記者クラブ制度みたいなものもなくて、自分の取材力で、自分達の署名で書いている。記者クラブは護送船団方式だから、能力のある人を伸ばさないシステムでもあります。日本って、ジャーナリストと言える人が少なくて、「記者」というより「新聞社員」「テレビ社員」と呼びたくなるような人が多いと思います。情報は豊富だと思うのだけど、仮説と検証という手順の欠けた記事、あるいはこれまでの定説に何の疑問ももたずにそれを繰り返したり、役所など情報元の見方を鵜呑み、客観的な批評精神に欠けた記事などが散見されます。決められた枠組みでしか考えていないということかもしれない。記者会見で「正しい質問」ができることが第一歩ですよね。
- 佐々木
イー・ウーマンでも、新聞記事は、すべて署名入りの記事にしてほしい、ということをずっと言っているんです。せめてそうしてくれれば、皆もう少し責任を持って書くんじゃないかと。アメリカの新聞は全部記者の名前が書いてある。以前、ウォールストリート・ジャーナルの記者をしていた友人とウィンウィン対談したときに、記者がストライキをしたことがある、という話が出たんです。その時に、皆、署名を入れないで記事を書いたと。日本の新聞記者は、毎日ストをしているようなものですね。
- 川本
そう。伝える題材があるのに、勝手に書かなかったり、後日談みたいに載るのって、すごく変でしょう? 「実は知っていた」みたいな記事。「じゃあ、どうして書かないの? あなたの使命は何なの?」と思ってしまう。
もう一つ新政権に期待しているのは、すごく古い家族観みたいなもので残っている制度がたくさんありますよね。たとえば……。
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