ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第132回 金子郁容さん

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慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科委員長、教授
金子郁容さん
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スタンフォード卒業というバッジだけで
- 佐々木
応用数学でしたよね?
- 金子
コンピューターサイエンスと応用数学。日本の大学の先生で、業績を評価されて海外の大学に呼ばれる人は少なくない。でも、私の場合、アジアからきたひとりの26歳の学生で、とくに業績もない。スタンフォード大学Ph.D.というバッジだけを持って、いろんなと大学でジョブインタビューをして、職を得て、ゼロからスタートしました。ちょっとかっこよく言うと、外国という環境の中で、自分で自分の道を見つけたということです。その経験は私の人生で貴重なものです。
- 佐々木
確かにそうですね。
- 金子
外国に行くことがなんでもいいとは思わないけど、やっぱり、外国にいると、買い物するのでも、郵便局に行くのも、全部システムが違うわけじゃない。そういう環境に身を置くことによるとまどいや不安を感じるという経験は貴重ですね。
- 佐々木
そこが重要なんですよね。体験の幅が広がって、多角的な発想ができる。
- 金子
私にとっては大きなことでした。
- 佐々木
それが多様性じゃないけれども、自分をストレッチさせるし、成長の源になっていくわけですよね。
- 金子
一方で、アメリカで長いあいだ生活すると、アメリカ人のほとんどは、日本でよく言われる「アメリカ」というイメージとは程遠い、地域活動に精を出し、地元大学のスポーツ試合に熱中し、新聞は地方版だけしか読まないなど、とてもローカルな人たちです。それが、この10年ぐらいで、日本の社会って、アメリカの一番悪いところだけを吸収しちゃって、ビジネスの成功から教育から健康まで、なんでも自己責任になってしまったという気がするのね。
コミュニティの崩壊とよく言われるけど、つながりが希薄になってきて、その分、孤立したひとりひとりが自分のためだけにがんばれ、そうでない人は「落ちこぼれ」だとなってしまっている。もっと、つながりの力を作るために、自分より広い範囲の貢献をしてゆくようにしないと。その中で、なにもしないで流れに沿ってゆくのではなく、自分の考えを出したり、おかしいと思うことがあれば、小さいことでもいいので自分からやったりする。そういうつながりをつくり直さなくてはならなくてならない。
ほうっておくのでは駄目なので、それぞれの立場でつながりをつくるような場をつくっていくことを意図的にやらないといけないと思うんですね。イー・ウーマンもすごくいい場だと思います。そういう人たちがどんどん増えていくことを願っています。
- 佐々木
ありがとうございます。先生は、体力維持もしてらっしゃる?
- 金子
毎年、一回、フルマラソンを走るようにしてる。去年、おととしは東京マラソンを走りました。今年は、まだこれから計画するのだけど。体力がなく、球技は苦手な私がひとりでできるのが走ることなので気に入っています。
- 佐々木
素晴らしい。また今日の再会をきっかけに、いろいろお話できることを楽しみにしています。ありがとうございました。
対談を終えて
日本の公立学校がどうしたらよくなるのか。学校の周辺住民など「コミュニティ」と学校教育を研究されている金子先生。とても久しぶりにお会いしたのですが、まったくお変わりなくお元気で、さわやかで、温かい空気がありました。慶應幼稚舎の舎長だった頃のお話も盛りだくさんでしたし、コミュニティ論についてはイー・ウーマンとの共通点もいっぱいありました。「今度、ご飯でも食べようよ」の一言、忘れませんよ。これからもいろいろ教えてください! ありがとうございました。
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