ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第101回 渋谷 和宏さん

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渋谷 和宏さん
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あんなに悩んだのはない。人生で初めて。
- 渋谷
それから……勇気を出して打ち明けますと、僕はその頃、自分にまったく自信を持てなかったんです。
こういう言い方にはいささか語弊があるんですけれど、日経BPに入ってくるのは、ピカピカの経歴の人が少なくないんです。でも僕は10代の終わりにいろんな意味で精神的に追い詰められてしまって……。今からすると抑うつ神経症だったのではないかと思いますが、一時期、家に閉じこもったりして、それで2浪して法政大学に入ったんです。
高校時代までは秀才でけっこうチヤホヤされていたんです。でも、その体験は20代前半の僕にはけっこう重くて、以来、「僕はダメな人間だ」なんて思うようになって、就職してからも他人への引け目をいつも意識していました。今でも昔の友人に会うと、「あの頃のお前って、ずいぶんイジけていたよな」なんて言われたりします。
そんな僕にとって、日経ビジネスでの仕事は自分が生まれ変わるチャンスに思えたんです。ろくに睡眠を取れず、2日も3日も家に帰れない日もありましたが、ものすごくやりがいがあって、面白くて、こんなワクワクしたことってこれまでに無かったなと思いました。
だから、ここで「お前はもう要らないよ」なんて言われるわけには絶対にいかなかったんです。もし、そんなことになったら、僕は何一つモノにできなかった人間として終わってしまう。頭角を現すのは無理かもしれないけれど、後悔の無いように必死でやろうと本気で思いました。
ですので一皮むけたなと思えるまでは悩みましたね。どうしたらいい記事が書けるのだろうと四六時中考えていました。あんなに悩んだのはない、人生で初めてという感じでした。
- 佐々木
それってすごくいいお話で、小さな失敗をしたとき、そこで言われた一言がすごく重要なことなんだって気づいた。例えば、そこまでずっと問題無くというか、あまり苦労も無く、順風満帆に来て日経マグロウヒルに入ったとしたら、1本目を書いてみたら、あまり評価が高くなかったとしても、それほど危機感を感じない可能性があると思うんですけれども、小さな痛みだったのかどうか分かりませんけど、大学の入試の事だったり、大学時代の生活の中から、「もう、これが、もしかしてラストチャンスだ」ぐらいの意気込みがあったというのは、いい事だったんですね。
- 渋谷
たぶんそれは幸運だったのかもしれないですね。今、振り返ってみますと。
10/27
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