ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第97回 伊藤元重さん

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伊藤元重さん
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優秀なアジアの大学生たち
- 佐々木
中国は、子どもたちの英語教育も熱心で、海外留学にもどんどん出す。経済成長には欠かせない、非常に戦略的な動きだと思っていますが。
- 伊藤
その最たるものは、清華大学。もう、すごいですよ。最高の予算をつけるし、いい先生を引っ張るために、いくらでも金をつけるしね。そういう戦略性っていう意味では、すごいですよね。
中国とは違うんだけど、例えばシンガポールでもそうですよね。シンガポールでも戦略的にやれる。日本も本当はやらなきゃいけないんですけど、なかなかそれができない国。
- 佐々木
先生は、今、東大で日本のエリートと接していらっしゃるなかで(笑)……。
- 伊藤
今度、私のゼミの学生が、総長賞っていうので、経済学部の学生を代表して賞状をもらうんですよ。ところが、彼女、中国人なんです。もっとも、6歳くらいまでが中国で、その後オーストラリアに出ていますけどね。
- 佐々木
日本経済はどうなっていくんでしょうね。別に、日本経済を支えるのが日本人である必要は、必ずしもないかもしれませんけれども。
- 伊藤
やっぱり、そういう意味では、しょうがないのかもしれませんね。日本は豊かだから、ハングリー精神が少し薄れてきちゃうということはあるんだけれども。でも、何とかしなきゃいけないんだと思いますよ。
で、私のゼミに関してみると、最近、面白い現象が起きていて、私は「大相撲現象」っていうんですけどね。
たまたま、今は中国人なんですけど、2年ぐらい前までいた、うちのゼミで優秀な人たちが、モンゴルとブルガリア出身なんですよ。で、そういった優秀な人が来ると、日本人も燃えるんですよ。だから結果的には、やっぱり日本人の子どもたちも、モンゴルやブルガリアの人たちがいたために、非常によかったですね。
- 佐々木
本当に大相撲と一緒なんですね。
- 伊藤
ブルガリアとモンゴルが、なぜ優秀かというと、ブルガリアの女の子が言っていましたけど、彼女はブルガリアでその時期のたぶん高校でトップクラスなんですね。ブルガリアの優秀な子っていうのは、ほとんど外国に行きたいんですよ。彼女の場合、さらに言えば、自分の親のお金でブルガリア国内の大学に行くことは、経済的に許されない。
で、奨学金の試験を受けるんです。どこでもいいんだけど、いいお金をくれるのは、やっぱりアメリカとドイツと日本です。で、たまたま彼女が受けて、日本が受かったから、日本に来た(笑)。だから、優秀なんですよね、ものすごく。
だから日本の留学制度も結構うまく機能していて、そういう優秀な人たちが来ていることも事実です。プラス、東大に来る前に1年間外語大学で日本語の教育を受けますから、日本語はペラペラで、しかもそういうメンタリティーを持っている人が増えるっていうのはいいことですね。
ちなみに、もう1つだけ自慢話をすると、もし、今、例えば日本の総理がタイに行って、スラユット首相と会うと、タイの外務省の通訳がつくんですけど、その通訳は多分私のゼミ出身者です。彼がタイの外務省きっての日本語の使い手だからです。
- 佐々木
そうなんですか。
- 伊藤
彼は高校の時に、タイの国費留学で学芸大附属高校に来て、そのまま東大に入って、大学院はアメリカに行きましたけどね。で、その次の留学生も、また僕のゼミ生で。だから、あと何年かすると、もうタイの外務省の日本マフィアは全部私が握る、と(笑)。そういう意味では、留学生って非常に大事ですね。
- 佐々木
そうですね。ネットワークは重要なわけですが、それが教え子たちの年代にまで広がるのは、強いですね。
11/26
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