ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第87回 金平 敬之助さん

87 |
金平 敬之助さん
|
|
|
瞬間主役をつくる
- 金平
そう。だから、よく学校の先生にする話があります。こんなアドバイスです。掃除当番の子どもが雑巾がけをしている。先生はそれを見てすかさず褒める。「ぞうきんの絞り方うまいね、A子ちゃん」。A子ちゃんは「おばあちゃんから、昨日習ってきたの」と言ってうれしそうな顔をする。子どもはだれでもその子なりの傑作をやっているのです。それを発見するのが先生の大切な役割ではないですか。
「おい、皆集まれ、A子ちゃんのしぼり方うまいだろう。しぼり方名人だね。皆よく見て真似したらいいよ」。この瞬間A子ちゃんは教室の主役になるのですね。褒めて、瞬間主役をつくる。こんな瞬間主役を毎日たくさん誕生させると、教室の風景がよくなるのですね。教室の風景がよくなるとよい子が育つのです。この、私のアドバイスに先生は素直にうなずいてくれているような気がします。
- 佐々木
そうですね。我が家もそうしています。昨日、私が家に帰ったら、小学校1年生の息子が、「夕食は僕が作る」と言って、キッチンにいるんです。台に乗って。でも「何を作ってくれるの?」って見たら、彼が、2年生の先輩にいただいたサツマ芋を、おばあちゃんが手伝って裏ごしをして粉にしたのを、カレー粉に包むとか言って、訳のわからないことをやっていたんですね。
楽しそうにやっていたので、私が「すごく美味しそうじゃない」って言ったら、もう自慢げに、「カレー粉をお芋で包んでから入れるんだよ」。これは、褒めようと思って、「ちょっと、すごくおいしそうなんで、お母さん、ビデオ回していいかな?」って言ったら「いいよ。早くしないとやっちゃうよ。早く持ってきてよ、ビデオ」って。
そうして作ったカレーを、自分で2杯も3杯もお代わりして、美味しい、美味しいって言って食べてました。本当に美味しかったんですけれども、でも、そうやって、子どもを見ても、持ち上げれば、いくらでも何でもやってくれるっていうのがわかりますよね。
- 金平
そうなんですね。いまのお話なんか、1年生のお子さん、喜んだと思いますよ。子どもばかりでなく、大人に対しても褒める材料っていくらでもあるじゃないですか。最近、私がすごいなと思った話があります。親しい人がカウンセラーの仕事をしているのですけれど、その女性から聞いた話です。いま、市町村でもうつの状態で失業している中年以上の人がカウンセリングを受けられるところがあるんですね。ところが、肝心の本人がめったに来ないそうです。
- 佐々木
そうですよね。相談に来る人は、すでにいいですものね。
- 金平
おっしゃる通りなんです。だから、たまたま来ると、真っ先にカウンセラーの女性は言うそうです。「ここに来るだけでも、すごいことですよ。偉いです。素晴らしいですよ」って。こういう褒め方からカウンセリングを始めるそうです。滅多に褒められることはないので、こんな褒め言葉でも、とても明るい顔になると言っていました。
褒める材料っていうのはいくらでもあると考えていいのではないでしょうか。私は「ムリしてでもいい。こじつけでもいいから褒めなさい」って言うんです。「何でもいいじゃないですか。まず褒めちゃいなさい」って。よく、これも講演のとき紹介する話ですが、将棋の名人の話です。
若いとき、小学校1年生の長男がオール1を取ってきた。叱るかと思ったら、「これはすごい」と、まず褒めた。「何がすごいんだろう?」と母親が疑ったら、こんな言葉が続いたそうです。「何はともあれ、同じものでそろえることはなかなかできることではない」って(笑)。
22/34
|
 |
|
|