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陰山 英男さん
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不登校児が10万人も増えて、教師の増員効果が相殺されている
- 佐々木
総合学習の見直し、学力低下が叫ばれ、教員の免許更新制度の提案もあり、中教審でも学習指導要領の見直しをディスカッション中です。今の小学校の現場は、どんなふうになってますか。
- 陰山
学力問題で学校現場に対して学力向上をもっとやれという動きが出ていますが、そういう動きに沿う動きとそうでない動きに二分したように見えるじゃないですか。「この学力問題が話題になってるときにこそ、なぜ百ますをやらないのか」とか言われているのにね。
でもね、非常にはっきりしてるんだけど、学校は実はそれどころじゃないんですよ。不登校だとか、万引きとか、子どもが教室から飛び出したとかね、そういうことで手いっぱいの学校がたくさんあるんですよ。
- 佐々木
学力低下よりも、他にやらなくちゃならないことが現場にはある、ということですか。
- 陰山
実はね、日本の教職員って、子どもの数が減った関係で、実質的には増員されてきてるわけですよ、この十数年の間にね。ところが、成果が上がってないんじゃないかって、財務省が言ってましたよ。でも違うんです。1981年に日本の不登校児って、全国で一万何千人だったんですよ。今は12万人。10万人増えてるわけ。つまり、教職員を増員しても、そちらへの対応に追われて、増員の効果が相殺されてしまっているわけですよ。
- 佐々木
教員の仕事が多すぎるっていう、日本の実情がありますよね。実は先日、アメリカに2週間行って、小学校を見学したり、ある学校心理学者と対談させていただいたんですね。で、その中でおもしろかったんです。学校心理学者って、ご存知かもしれませんが、カウンセラーと違って、心理学のバックグラウンドの人が、公立の小学校や中学校、高校、全米、全校に配置されてるんです。
- 陰山
へえ。
- 佐々木
学校心理学者っていうのは、心理学の修士を持つ専門家で、各学校に配置されるんですけど。何をするかっていうと、子どもなどの心理テストをするわけです。全員じゃなくって、親が希望するか、担任が希望した子どもに対して。
教室を飛び出してしまう、椅子に座っていられない、あるいは障害がある子も含めて、全部一人ひとり、スタッフの人がきちっと試験をする。それでね、心理カウンセリングは今度、校長先生を含めた8人くらいのチームで、その子どもについて、こういう検査結果が出たからと言って、特別な環境を作ってあげるんです。
そこには、読書のセラピスト、数学のセラピスト、全部、それぞれの先生が特別にパブリック・スクールにいて、担任を持たない。おまけに小学2年生までは1学級17人なんですよね。
だから今、40人のクラスで1人の先生が、落ち着かない子もいれば、騒ぐ子はいるわ、スーパーよくできちゃう子はいるわ、全然わからない子はいるわ、シャイな子はいるわ、そんないろんな子どもたちを、担任が1人で対応しなくちゃいけない日本の学校って、問題を解決するって言っても、とりあえず教員の配置は、スペシャリストの配置からやっていかなきゃなんないんじゃないかなって。
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