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山川 隆さん
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1日、8億から9億通のメールが「宛先不明」
- 佐々木
「迷惑通信に関する電気通信事業者の責務」というのがありますが、迷惑メールも初年度の研究なんですよね。
- 山川
これは弁護士の横山先生にまとめていただきましたが、今利用者にとっても、事業者にとっても大問題になっています。迷惑メールというか、広告宣伝メール。さらに、広告宣伝メールを装っていながら、実は詐欺メールというのがあります。
- 佐々木
それは更にひどいですね。
- 山川
昨年あたりから結構多くなっているんですが、フィッシングメールというのもあって、犯罪性が高いんです。そういったものに対する規制をどうしていったらいいか。
大原則に通信の秘密というのがあります。日本では憲法にも書かれており、大切なことであり、それゆえ、重い原則です。だから、明らかに法律違反のメールだと分かっていても、それを送ったのが何者であるか、通信事業者は利用者や他の事業者が聞いても教えてはいけないんです。言ってもいいのは、令状を提示されたときだけです。
それから、もう一つ、重い原則で事業者の役務提供義務というのがある。たとえば去年の初め頃なんですが、ドコモは1日10億通くらい、メールを受け取るんですよ。自分のサーバーに。そのうち、8億から9億が行き先不明なんです。
- 佐々木
本当に? 90%近くが行き先不明。リターンされてくるっていうことですか。
- 山川
ええ。宛先が実在しない場合、手順に従って、あなたさまがお書きになったこのアドレスは存在しませんでした、と言って発信者に返さなければならない。
そうすると、送った人間というのは、帰ってこなかったのは、受取人がいるアドレスだっていうことが分かるわけですね。それを1日8億から9億返しているわけです。
で、これ、何をやっているかというと、本来通信サービスのためにあるはずのリソースを使って、迷惑メール事業者に生きているアドレスを教えていることになってしまうんです。一生懸命。
- 佐々木
そうか。確かに。即時に、どれが行ったか行かなかったかを教えて差し上げているわけですね。
- 山川
はい。まさしく。これはその後受信側にそのような大量発信メールを拒否するオプションを設定して、今は大分良くなっています。ただ、簡単にそういう原則が悪いとはいえないんですよ。通信事業者が良いメール、悪いメールと判断して、悪いメールは届けないというようなわけにはいきませんので。
それから、今のインターネットのメールの仕組みで言いますとね、送り主の詐称ができるわけですね。こういったことを考えながら、世の中に対してどういうことを提言していったらいいのか、まとめたのがこの研究です。
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