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山川 隆さん
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調べるときの貪欲、書くときの禁欲
- 山川
我慢の生き方(笑)。あとすごくいいことを教えてもらったな、っていうのは、金森久雄さん。日経センターで。私がいた長期プロジェクトチームの主査だったんです。当時日経センターの理事長でしたから、企業から預かった委託生を直接指導するというのは珍しかったんですけれど、色々、教えていただいて。
で、私ね、印象に残ることが2つあるんです。1つは、最後レポートを書くときに言われたんです。「調べるときの貪欲、書くときの禁欲」って。これは今でも覚えています。それで、一生懸命、なるべく広く、深く、貪欲に調べろ。だけれど、書くときは知ってること全部書いちゃダメだ、って(笑)。書くときは、伝えなきゃいけないんだから、伝えられるようにきちっと筋を。
知っていることはあれも書きたいこれも書きたい。一生懸命調べるほど、書きたいことは出てくるんだけれど、それは禁欲しなさい、と。で、調べるときの貪欲、書くときの禁欲。
- 佐々木
いい言葉ですね。
- 山川
それからもう1つ、彼に教わったこと。私はエネルギーだとか輸入担当でしたから、全体の長期予測をするときに、石油価格が上がる、こんな感じの数字の置き方でどうでしょうかね、と言ったら、ダメ、と言われました。
もしも価格がここまで行くんだったら、世の中変わる。石油需給がそれだけタイトだったら、産業構造がドラスティックに変わる。長期予測でしょう。10年間だったら、産業構造ががらっと変わる。
自分が育ってきた環境だとか、足もとだとか、ちょっとした目先を見て、世の中はこうだと思ってはいけない。ちゃんとロジックが働く。だから、石油の需給がタイトだったら、5年6年したら、あっと驚くような変わり方をする。
そうなりましたよ。そのとき置いたとおりの数字になったかというと違うんですけれど、だけれど見事に省エネ型の産業構造に変わったし、エネルギー消費の大きい事業は海外にどんどん出て、出来上がったものを買ってくるというスタイルに変わってしまいましたね。
省エネ技術も環境技術も非常に伸びました。世の中はちょっとやそっとでは変らないと思うと、安心して何もしないか、変えようとする気持ちが萎えますが、ちゃんとドラスティックに変わるんだと思えば、どう変わるのか、どう変えるべきなのか考え、制度を準備し、技術を磨きます。この「変わる」というのが大事ですね。
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