ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第44回 アラン・ケイさん

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HP研究所シニア・フェロー、Viewpoints Research Institute プレジデント
アラン・ケイさん
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すばらしかった小学校4年生の時の教師
- アラン
小学校4年のときの先生が、すばらしかったんです。彼女について面白い話はいくつかあるのですが、一つ、強く印象に残っているのが彼女が教室に置いていたテーブルのことです。
「なんでもテーブル」といった感じで、そこにさまざまな工具や針金、電池や本などが雑然と置いてありました。でもそのテーブルについて彼女は何の説明もしなかった。もちろん、わたしたち生徒は興味津々です。ある日私は、そこに置いてあった本を読むうちに、書いてあったとおりに電気を使って磁石を作ってみたくなりました。英語(国語)の授業中、わたしは教科書を机の上に垂直に立て、ちょっと頭を下げて身をかがめて教科書に身を隠し、その陰でこそこそと電池や釘、クリップを用意して電磁石を作りはじめたんです。
- 佐々木
一クラス何人? 授業をしている先生は気づかないふり?
- アラン
30人クラスでした。初めは見ていなかったと思うんですが、私が突然「ワオ!」と大声を出したので、クラス中が私を見ました。静かにしてたつもりが、成功して磁石ができたときは、あまりの感動で、さすがの私も声を抑えることができなかったんですよ(笑)。
- 佐々木
それで大きな声で叫んでしまった。
- アラン
そう。先生は授業を中断して、私の所にやって来ました。でも面白いことにまったく怒りもせずに「何をしていたの?」と静かに聞いたんです。私が電磁石を作っていたことを話すと、先生は、なんと他の生徒たちにも「みんな興味がある? 一緒に作りたい人!」と尋ねたんです。そして教室をグループに分けて、英語の授業が電磁石についての授業に変身、となりました(笑)。数ヶ月後には、授業時間の半分はグループに分かれて行うようになりました。誰かが何かに興味をもつと、必ずグループを作ったからです。
- 佐々木
すごい。公立校ですか? その先生は授業を変えていく権限も持っていた、ということですね。
- アラン
公立校ですが、誰もチェックしませんでしたよ。校長がどう考えていたかは今でも知りませんが、きっと、その先生についての良い噂を保護者たちから聞いていたのだと思います。こういったことの繰り返しで、そのテーブルで何かしたくて、私たちのクラスは生徒が学校に来る時間がどんどん早くなっていってね。ついに朝6時半に登校するまでになったんですよ(笑)。
- 佐々木
6時半ですか!
- アラン
そう。でもいつも、先生はもう教室で私たちを待っててくれました。
- 佐々木
ステキな先生ですね。
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