ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第40回 枝廣淳子さん

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同時通訳者・環境ジャーナリスト・セルフマネジメントコーチ
枝廣淳子さん
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「もったい」とは、命のことなんですよ
- 枝廣
「循環型社会」というのは、英語にできないんですね。たとえばrecycling based societyとか言うこともあって、環境省はこれを使ってるんですが、回るものはほかにもあるので、
リサイクル=循環ではないですよね。これもやっぱり「もったいない」だと思うんですけどね。
未来感にしてもね、欧米の人は直線型の思考をしますよね、日本人は循環型思想があるので過去と今と未来がらせん状に回りながら繋がっているという感じでしょうか。それが、ものを簡単に捨てられないという「もったいない思想」になっているんだと思うんですね。
わたし、個人的に「もったいない学」を研究してるんです(笑)。「もったいない」には方言がたくさんあるんですね。各地に講演に行くと「この地域で“もったいない”の方言ってありますか?」って必ず聞くことにしてるんです。北海道はね、「いたましい」って言うんですって。人が亡くなった時に使う言葉を「もったいない」に使うんです。「そんなにいたましいことしちゃ、駄目」という風に。
- 佐々木
へええ。なんだかドキッときますね。
- 枝廣
そうそう(笑)。で、青森へいくと、ちょっとなまって「いだましい」になるんです。ほかにも「おとましい」っていう所とか、「えだみった」とか、最初に聞いたとき「日本語ですか?」って聞いちゃったんですけど(笑)「あったらもんな」っていう所もあるんです。これは富山の魚津なんですが。で、面白くなって、英語にないことはわかったけど、ほかの言語はどうだろう、とアジアの人たちに聞いてみたら、あるんですよ。韓国語はね、「アカプッタ」という言葉があって、「もったいない」っていう時、「お天道さまに申し訳ない」っていう気持ちがあるじゃないですか、そこまで含んだ言葉なんですね。あとね、タイとインドネシアとフィリピンにもあって、インドネシアとフィリピンは「愛する」というのと同じ言葉を「もったいない」につけるんですって。
- 佐々木
へええ。
- 枝廣
でね、「もったいない」ってどういう意味かなと思って、もったいない=“もったい”がない、だから、じゃあ“もったい”ってなんだろうと広辞苑を引いたら、「ものの本質」とか「命」。ものの本質や命が最後までまっとうできなかったときに、わたしたちはもったいないって思うんですね。まだ使えるのに、途中で壊れちゃったら、ほんとはもっとまっとうできたはずなのに、「もったいない」。
そう思うと、「もったいないこと」はたくさんあるし、人もね、今、「もったいない」使われ方をしている例がすごくあると思うんです。たとえば、ちょっと“古くなった”とか、ちょっと“普通と違う”とか、ちょっと“働きが悪くなった”って言って取り替えたり捨てたりしてるじゃないですか。でもそれは、その人の持ってる最大限の力をまっとうしてもらっていない。それをまっとうしてもらうことが、「もったいない」を生かした生き方ですよね。大量生産・大量消費・大量廃棄の社会って、ものが無駄になるだけじゃなくて、人も大量廃棄してるんですよ。だから、物だけ循環しても、人が大量廃棄されていたらしょうがないわけです。両方でやらないと。
- 佐々木
まあね、人の笑顔のない地球に草木だけが生えててもねえ(笑)。
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