ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第37回 石井苗子さん

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石井苗子さん
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自分で思うのとは違う「自分」にびっくり
- 佐々木
石井さんらしい展開。
- 石井
剣道って面をつけると、自分の世界にこもる。で「ヤー!」とか、「トー!」とか、言わなきゃいけないのに、わたしは声がでなかったの。あれーっ、こんなに騒がしい人間なのに、なんで?って。意外な発見だった。
看護の勉強と、剣道には、あれーっ? っていう発見がいっぱいあった。いかにわたしたちは、“自分はこうだ”という固定観念にはまってしまっているか、っていうのがわかった。ほんと、わたしは昔からこうでした、って思い込んでることがいっぱいある。わたしは昔から騒がしくて、小学校ではしょっちゅう職員室呼ばれてて。自分の中でできあがってるのね。それが意外にまじめな人間なんだって、初めて知った。
- 佐々木
話を聞いてればわかりますよ。
- 石井
えっ? どこが? まじめな人間は1日で剣道やめないでしょう。でも、意外にまじめなの。驚いちゃった。
聖路加看護大学では実習訓練があるの。「どうぞ保育器に入っている未成熟児のセクションには送らないでください。あそこだけはやめてください」って祈ってたのに、当たっちゃったの。この不まじめなわたしがさ、保育器にそっと手をいれてケアするのよ。生きた心地じゃないわ。そうすると、心配で毎日寝られないの。でも睡眠不足になるとミスが多くなるから、激しく怒られる。
- 佐々木
ちょっと待ってください。石井さんの研究内容と、未成熟児の実習って、どういう関係?
- 石井
そうでしょう? それが、聖路加は、国家試験を受ける前に実習しましたっていうのがないと駄目なの。わたしも知らなかった。実習は全部網羅しましたとなって、はじめて国家試験の受験資格っていうのがもらえる。独学を許してくれない。勉強できても、実習できなければ駄目、実習は独学じゃできないでしょ。
- 佐々木
そうか。
- 石井
わたしは老人介護は向かないだろうとか、小児病棟は嫌われるだろうとかいろいろ思ってたんだけど、これが全部違った。
「わたしにはこれは絶対できっこない」くらいの仕事をやったほうが、注意散漫にならない。これがわかった。実習では、精神科に行くのを楽しみにしてたの。強制閉鎖病棟。そこに行けば自分の何かを発揮できると思ってたの。でも全然駄目だった。吸収しちゃうものが大きすぎて。えらいきつかった。驚いちゃった。
- 佐々木
自分発見か。全然レベルが違いますけど、わたしも閉鎖病棟に行ったことあるんです。20代のとき、通訳者として心理学を学ぶために精神病院の閉鎖病棟で1週間のボランティア研修を受けたんです。朝から夜まで。行く前は、わたしは全然偏見もないし、きっとさまざまな学びがあり、貢献もできるだろう、などと思ってた。でも、2日目、お昼ごはんが食べられなかった。8時間一緒にいることもできなくて、一瞬でもいいから外出したいっていう気持ちになった。そんな自分に情けなかった。
- 石井
そう。剣道と看護の2つで、自分が意外に用心深かったり、慎重だったり。そのまじめで慎重、用心深いのは、どこかで潜在的におびえになってるから、それを上回るエネルギーをだしてそこまで落ちないようにしてたんだな、ってわかってきた。
「落ちたらいかん」って生きるって、ストレスフルだよ。落ちちゃったら大変なんだ、っていうのね。わたしはそういう生活をずっとしてきたんだってのが、わかった。
- 佐々木
剣道はこれからも続けていく?
- 石井
ずうたい大きいから。それにある時にね、「これって合法に人のこと棒でたたいていいんだ」って思って。そうわかると「わーっ、打て打て打てぇ」みたいな性格がでてくる。「無駄なたたきが多いですよ」って最近注意される(笑)。
- 佐々木
段も持ってるとか?
- 石井
いま3段。そろそろヨガとか太極拳とかもやりなさいって言われてるの。剣道は究極の無酸素運動だから。小さい頃からやってる人は60歳でもできるんだけど。わたしはね……。やってる? ヨガとか。
- 佐々木
昔、やろうと思ったんだけど、すぐやめちゃったんですよ。わたし、もともと体がやわらかくて、ヨガ教室行ったんだけど、初めからどのポーズもいきなりできてつまらなくてやめてしまいました。本当はヨガは呼吸法なんですけどね。若かった。で、太極拳はまあ続けてた。これも20代だけど。横浜生まれなんで中華街のスタジオで結構本格的な感じに。
- 石井
太極拳は良くなかった?
- 佐々木
良かった。今でもやりたい。『ニュースステーション』で気功の取材に中国に行ったことがあるんですけど、「気」を理解することや、「気」を使った運動は、体に良いだろうと思いますよ。
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