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藤巻幸夫さん
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日本文化の香り漂う家庭に育つ
- 藤巻
僕はね、おもしろい育ちをしてきたと思うんですよ。それが自然な流れだったのか、自分でつくったのかはいちいち考えてないけど。ただ三島由紀夫が結構好きだし、『葉隠』とかをけっこう読んでた。
- 佐々木
哲学があったのね。
- 藤巻
うん。哲学はあったかもしれない。だから三島の『葉隠入門』や原文の『葉隠』を読んでると、「男は死ぬ気で働け」とか「思ったら行け」とかを潔しとする文化を僕は持ちたかったなと。だから30歳くらいからは伊勢丹に行っても、上司に向かっての仕事じゃなくて、天というか神に向いた仕事をしたいなという意識でやってましたね。
- 佐々木
そこが特別なんですよね。でも少しずつわかってきたかも。ガンガン進んで行くぞっていう力、情熱を持っている上に、なんでもありの高校生活の中でさまざまな人や、ちょっと一般的でないかもしれないくらいダイナミックなライフスタイルを毎日見たわけでしょう? きっと哲学があったから、なんでしょうね。わたしも高校の時に言われたんですけど、いつでも不良になれるような環境に育ってるわけですよ。ね?
- 藤巻
なれるなれる。十分なれる。
- 佐々木
わたしも先生に「よくあそこで不良にならなかったわね」って言われるんだけど。
- 藤巻
同じだ。
- 佐々木
ある意味、そういう環境だと道が分かれてるようなものですよね。どちらにも行ける。でも藤巻さんの場合、逆にそれが力になって人を引き付け、リーダーシップをとって、カリスマと呼ばれるまでになった。
- 藤巻
そうだよね。どっちの道もあった。うちは豊かな家ではけっしてないんだけど、親父は大手家電メーカーの社員で。8年前に亡くなったんだけど、けっこうエリートな家系なんですよ。僕のおじいさんは金融家で、ニューヨーク支店長までやってるけど、遊び人でとんでもないおじいさんだった。親父は7人兄弟の 5番目だったんだけど、上は慶応の医学博士だったりするのに、親父は本当に地味で。背広も何着かだけしか持ってないし、車の免許もなくて、クラシック音楽と、またお金もないからいい陶磁器じゃなくて、その辺の普通の土鈴を集めたり、お茶碗を集めたりするような趣味しかなくて。おふくろも文化の香りがほのかにする家に育ったんですよ。だから、おそらく美というものを小さい時から意識していた。
貧乏だったけど、父の勤務先には保養所があったから、家族旅行をたくさんしているんですよ。いまだに龍安寺の石庭なんてものすごい頭に入ってるし、奈良・京都はかなり見て回っているから、頭の中に日本文化があるのは事実ですね。
- 佐々木
家庭がしっかりしていて、旅行をたくさんしてるっていうのは、うちもそう。家族旅行はいっぱいしたなあ。でもそれだけじゃなくて、藤巻さんの場合、そこで見た日本文化が重石というか基点になっているんでしょうね。
- 藤巻
DNAなのかね。中学の時不良になりかけたこともあります。変なかばんを持ってね。だけど、戻る何かがあった。
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