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藤巻幸夫さん
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食にこだわる。それが大人文化
- 藤巻
僕は今ほんと哲学の時代に入ってきてると思うんですよね。どう生きるか、どう死ぬか、どう生活していくか。生活文化って言葉が好きで、日本人は生活を楽しむということをなめ過ぎてますよね。
ある職人だけど、いいなと思ったのは、朝は昼ごはんのことを考えているわけ。昼は食べながら夜に何を食べようか考えてるわけ、そこに仕事が入る。食を中心に仕事を考えているわけ。でもそれ大事だなと思ってるんですよ。寝ることとか食事とか、人間の根幹でしょ。31歳の時にその人に会って考えが変わったの。
30品目食べるとかよくかむとか、ちゃんとした時間にちゃんとしたものを食べるというところはぜいたくしたいな、と。最近昼は忙しすぎて駄目ですよ。お弁当とかおにぎりばっかり。でも夜くらいはちゃんとしたレストランで、それは高い安いじゃなくて、仲間と会話をしながら食べるっていうのが大事だと、今は思っている。それが大人文化かなと思って、だから最近食にはこだわりますよ。
- 佐々木
それ、いい言葉です。「食は大人文化」ですよね。
- 藤巻
本当にそう思わない? 昔は鮭弁当にシャネルスーツとBMWとか言われたじゃない。あれは違うと思う。別に車も服もどうでもよくて、やっぱり食を大事にする人って文化人のような気がする。食器にこだわるとか家にこだわるとかは、食のこだわりから出てきてると思う。
- 佐々木
たしかに。ホームパーティーをしたり、この食事にはこのお皿とかね。
- 藤巻
あの人にこれを食べさせてあげようっていって、そこにお金を使うほうがいい。家が小さくたって、1LDKでもなんでもいいと思う。大きい家に住むよりも一部屋に凝ってる人が好きですね。だから白洲正子の武相荘なんかも大好きなわけ。畳の中にあれだけのものがあるのはすごいと思うな。
- 佐々木
そうか。じゃわたしのアパート見せたかったな。公団の3万円のアパート。工夫し、手を入れ、味があったなあ。
- 藤巻
佐々木さん、すごいと思う。わかる。それが原点でしょ。ある程度ちょっと成功したなと思ったら、人に返すことですよね。おごることもそうだし、絶対一人だけが成功したいと思った人間に成功はないよね。
- 佐々木
ないですよね。それはそう思う。
- 藤巻
人付き合いだって、映画を観ることだって、日本は“before-after”が下手すぎますよ。“do”ばっかりだもん。たとえばパリでオペラを観るっていうと、待っている間にスープを飲ませるというサービスがあるでしょう。やはり“before”があって、そこに行って“after”があって余韻を持って家に帰る。それが文化でしょ。余韻でしょ。
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