ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第31回 藤巻幸夫さん

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藤巻幸夫さん
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存在意義と意外性を見いだそう
- 佐々木
光栄です。わたし、よく「人の器の大きさは、出会いの数と体験したシーンの数で決まる」っていうんです。いろいろな環境でわたしたちは人と出会うし、ダイナミックな場面に触れるほうがよっぽどすてきな人になるじゃないですか。
だからさまざまな人に出会いたいし、さまざまな環境に身を置きたいとわたしは思うんだけど、でも人間を3つに分けると、そういう環境を活かして力を発揮する深みのある人になっていく人と、何をされても無表情になって凡々と生きていく人と、あとはただただおぼれる人があるじゃないですか。藤巻さんはダイナミック。その魅力がいい感じですよね。
- 藤巻
ありがとうございます! そんなふうに褒めていただいて。僕はヒッチコックの映画が好きなんですよ。ヒッチコックって映画に一瞬だけ出るでしょ? ああいう生き方が好きなんですよ。
- 佐々木
でもかなり目立っていらっしゃいます(笑)。
- 藤巻
だから今、僕の理想とは違うところにいるから、本当の話、もう少し引かなきゃいけないと思ってるんです。誰かに熱を伝導していきたいの。三島由紀夫だけでなく一応いろいろと読書をしたから、正しいものは長く続いているものしかないと思ったわけ。クラシックとか、世界の美術館に作品がある画家たちとか、思想が100年とか200年とか続くような。それを学んできたとしたら、若い連中に伝道していくってことが必要なのかな、と。40歳を過ぎたくらいから思うようになった。
前はそんなふうに思わなかった。伊勢丹を辞めて、デザイナーと組んでビジネスをして、次にキタムラという会社に呼ばれて。このキタムラも、創立 120年の横浜の老舗ブランドですよ。そこでそれなりのことをやっていたら、福助に呼ばれた。思っていることの軸は本当に変わっていないから。
18年来の部下もいるわけですが、「藤巻さんのところに付いて行きたい」って言って、女の子が3人くらいついてきているんだけど、20歳の時からの僕を見ていて、「本当に変わらない」って言ってる。それが一番の証人でしょ。
時代を見ながらそのステージに上がって仕事をするけど、基本は変えずにね。それである一定のところまでくると、若いやつの面倒を見る。
- 佐々木
わたしも、同じ考えです。基本を変えずに続ける。
- 藤巻
それでも、僕、人を育てる人が一番立派な人だと思ってるんですよ。
- 佐々木
そうですね。わたしも修行中。
- 藤巻
うそだあ。そんなことないでしょう。それは、育てるつもりがなくても自然に周りが育っているということ。育てるっていうのは個人の主観だから。僕がおこがましいかもしれないけど。もしかしたらこの人たちは、僕がしっかりしないから、そのためにも育とうと思っているのかもしれないけれど。ただ、人を育てることには、ものすごい関心がありますよね。
- 佐々木
それはその通り。わたしも、そのためにイー・ウーマンをつくったんです。
- 藤巻
そうだよねえ。だって、このテーブルだって、作った人が誰かいるわけでしょ。なんかみんな勘違いをしているよね。物から見てしまうでしょ。そこには人がいる。だからニワトリかタマゴかという話をするんですけど、そういうことじゃないですかね。
人ありきで企業戦略やコンセプトがあって、会社を何のために存在させて、時に意外性を見出していくということが、グッドサプライズでしょ。
だから存在意義と意外性という言葉が結構好きで、これの存在している意義は何で、だけどそこに意義しているものが時に意図していないものに生まれ変わる。それが時代感覚だと思うんでね。
- 佐々木
すごくよくわかります。
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