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久米麗子さん
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テレビとラジオの違いは、「視覚」
- 久米
久米がテレビに出るようになった時、スタイリングをすることになって、まず「テレビとラジオの違いって何なんだろう」って考えたのね。
で、「あら、テレビは視覚じゃない」と気付いたんですよ。
じゃあその「視覚」を考えようと思って。ないお金をほとんど洋服につぎ込んで、そのあたりから視覚に対して配慮することが多くなりました。
そのころ、パンタロンがはやった時代だったのね、パンタロンをはくと久米が「ぼくは恥ずかしくて、ゴキブリのように廊下の隅を歩いています」と言うので、「いや、それでいいんです!」って(笑)。
- 佐々木
(笑)。
- 久米
わたし、もとの仕事がモデルやフラワーデザインを教えることなので、「視覚」という意味では、今のスタイリングの仕事ととてもよく似ていると思うんです。色、形を考えるという部分で。だからとても入りやすかった。
それと、当時はテレビのスタイリストはいないから、ニュースを読んでいるキャスターが、上はジャケットにネクタイ、下は短パンということもあったくらいです。バストショットだとそれで十分だったんですよね。
スタイリストはあまりいなくて、アナウンサーには年間1万5000円ぐらいの衣装料が出ていた程度なんですよ。そのお金でラジオをしていらっしゃるアナウンサーが、ハムを買って、始末書を書かされたっていう話もあるのよ(笑)。
- 佐々木
ハムですか(笑)!?
- 久米
でも、わたしはそうではなくなる時代がくると思っていました。まだ職業として認められないから、テレビのスタイリストは雑誌と違って誰がしているのか名前が残らないんです。もちろんテロップに名前が出て残っている方もいらっしゃいますけど。
たまたまわたしが久米としてきた番組はそういう番組じゃないので、服1着拝借するのでも、クレジットが出るか出ないかで対応が全然違うから大変なときもありますし……。
- 佐々木
わたしが出演していたTBS系の『CBSドキュメント』では、足先まで全身映って困りました(笑)。その上ご丁寧に、カメラが3カ所から撮っているので姿勢も大切だし、サイズ調整するのに洋服をつまむこともできない状態でした。出演者にとっても、上半身だけが映るのと、全身が映るのとではまったく違いますよね。
- 久米
わたしも一年ぐらいテレビに出させていただいた時期があって、毎日着替えるという苦労を知っていたので、「おしゃれ」の仕事を始めたころは、時間があると衣装を拝借するために、歩き回っていました。
当時、服のメーカーに広報室はなかったので、営業の方に「こういう番組で……」ってご説明に上がって、「なんとか貸してほしい。傷つけたら買い取りますから」と頼んで。そのころはサンプルがないですから。
それを友人が「よくまあ恥も知らずに、知らない人のアポをもらってよくやるわね」とあきれるのね。「10社ぐらい回って1社からOKもらったらいいと思っているから」って。今思うと、それはそれで楽しかったですよね。
- 佐々木
すごい。麗子さんでも、そんなご苦労されながらだったのですか。テレビ番組にスタイリストがいなかった時代がある、というのが不思議なくらいですが、『ニュースステーション』は、本当にさまざまな新しい考えに支えられていたんですね。
- 久米
そのころ営業マンだった方が、今は支店長になられたり、重役になられたりしてます。中でも当時一年通っていた会社があって、最後に相手が根負けして「持ってけ泥棒!」とおっしゃったの。だから「返しに来る泥棒だ!」と言ってやり合って(笑)。
あと、配慮していただいて倉庫にうかがうと、「今日は久米さんが来るって言ってたから、ジュース買っといてあげたのよ」とパートのおばさんがジュースをくださったりね。
嫌なこともあるけど、10のうち一つくらいは「しててよかった」っていうことにぶつかるじゃない。そういうことが支えてくれるのよね。
- 佐々木
何でも、前向きに楽しむんですね。
3/11
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