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升永英俊さん
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実は判決は822億円ですよ
- 升永
その時、日本の歴史上一番高い金額は、30年ぐらい前に奇蹟のように起きた1,200万円というのがあって、その後はずっと下がってきて、50万円とか200万円とか、そのレベルの判例がずっとあるわけですよね。30年前の1,200万円という奇蹟みたいなのを超えることだって難しいわけですよ。だって、30年前じゃあ、例がないのと同じようなものですよ。で、やったところで、100万円とか、その程度の金額しか無理だろう、と。
だけど、中村さんの発明は、大変な大発明だから、私は1,200万円は超えたいと思ったわけです。だけど、私が自分のコストを考えると、全然1,200万円のために裁判をやるような余裕はないわけですよ。当時自分の収入も高かったですし、ペイが合わないわけです。だけど、やろうとしたんだね。それは、さっき言った、目の前にあるものを放っておけないから。
- 佐々木
こんな不条理を、このままにしておいてはいけない、と。
- 升永
そういうことなんです。だから、僕は、これは一銭にならなくてもいいと思って始めましたね。
- 佐々木
それで始めて見ると、たしかはじめの判決は200億円でしたよね? 「1,200万円は超えたい」と言って、200億円。
- 升永
いや、実は判決は、822億円ですよ。一部請求で、収入印紙代が200億円分しか貼っていないから200億円になっただけで、あれは勝った後で、もう一回、2番目の訴訟を起こせば、残りの六百何十億円を払ってあげます、という判決なんですよ。
- 佐々木
822億円ですか。それは、やはり仕事をしていくうちに、このくらいの規模で請求することが正義だと思ったんですか?
- 升永
はい、正義だと思いましたね。だって、会社の利益は特許の有効期間中の利益を累積すると3,300億円なんですよ。しかも、それは中村さんの発明だけで上げた利益なんだから。中村さんが就職したときに、半導体なんて、ハンドウタイのハの字もなかった会社でしょう? 蛍光体っていう原料メーカーなんです。半導体とは縁はなかったんです。で、中村さんは結局、半導体技術を自分で、自力で開発し、発明したんです。それで当時、年間利益が6億円だった会社が、年間営業利益が920億円まで上がったんですね。年間ですよ、営業利益ですよ。
- 佐々木
それはやっぱり、傍から聞くと、ちゃんと分けてあげればいいのに、と思ってしまいますよね。
- 升永
経営者だから、分かるでしょ? その金額の、年間利益がどれほど凄い数字かを。
- 佐々木
年間6億円が920億円になったら、それはね。
- 升永
会社は、800何十億円払ったっていいじゃないですか。だって、会社は、1年、900何十億円の利益を手にするんですよ。でも中村さんは、一回限りですからね。
- 佐々木
でも、結論からすると、あれは8億……。
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