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馬越恵美子さん
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もうすでに異文化経営の時代ではないか
- 馬越
これは非常に難しくて、ダイバーシティ・マネジメントも同じなんですけど、「多様性は企業にとってマイナスではないか?」ということをよく言われたり、あるいは「異文化経営って、日本には関係ないんじゃないか?」という論議がありますよね。
けれども、世の中を見回してみると、現実には、もうすでに異文化経営の時代ではないか、ということです。着ているものも、私のスカーフはタイ製ですし、すべて多国籍のもので私達の日常が成り立っています。原材料の仕入れも、外から。したがってビジネスをするには海外が関係します。
経営というと、「ヒト・モノ・カネ」とよく言いますが、モノは、もう海外から日本に入ってきているし、日本からも海外に行っています。カネも、世界的に流通しています。で、ヒト。人は、一番最後に変わるもので、なかなか人が異文化経営とか、国際化とか、グローバル化についてきていないのですが、問題は、日本人のマインド。それに日本市場が非常に大きいから、まだ日本の国内でやれるかな、ということで長くやってきてしまったことと、言語の障壁がありますね。
人というのが、今、国際化、グローバル化してきているんです。たとえばフィンランドなどは、元々、市場が小さいので、最初から外に向かって売り出していますから、人もそうやって国際化せざるを得ない。ヨーロッパの小国は皆そうです。オランダとかルクセンブルクとかも大体そうです。
アメリカと日本は、ちょっと違う。アメリカは、国内では多様性を抱えていますけれども、異文化の視点でみると、かなり内向きなんです。日本も、内向きが今までは許されていたけれども、それが、いよいよできない。国際競争力は、人が国際化しないと進められない。
たとえば、なぜ今企業がCSRや環境問題に取り組むのかと問う人はいないと思うんです。最初は、あったと思うんです。環境問題に取り組むと利潤の問題があるとか、あるいは、今から数十年前の社会科の教科書には、煙がモクモク出ている工場の写真を「これが産業だ」と載せている。もしあの頃、環境問題と言ったら、「そんなことを言っていたら、私達、食べられないじゃない」と言われていた時代があるのです。
異文化経営とかダイバーシティ・マネジメントも同じですが、時代が、もう、必要としているのです。
- 佐々木
ダイバーシティは、社会問題ではなく経済問題であることを、経営者が認識して取り入れる必要がある、と私も常々言っているので、同感です。それに、人の国際化っていうのが、つまり人が異文化、もっと言えば、先程のダイバーシティの、多様なものを受け入れたり、活用する力を高めたりするっていうことですよね。
手前味噌ですけど、先生にも出ていただいた私達イー・ウーマンの「働く人の円卓会議」には投稿ルールがあるんです。”I statement”、「私」を主語にした、自分の宣言文を書くこと、というルールです。「皆、こう思っているはずです」とか「最近の人は、こう考えているのです」という発言は、確かかどうか証明できない。しかし「私はこう思う」あるいは「私はこうする」とか「私はこうしたことがある」という「私」の事例を挙げてもらえれば、それは真実としてとらえられる。私が考えるダイバーシティの基礎は、まず一人ひとりがちゃんと自分の宣言文が言えること。一人ひとりの発言に違いがあることが、多様性の基礎だと思うからです。ですから、「働く人の円卓会議」では、毎日その訓練をしているつもりなんです。これらが、先生のお話と重なっている、という理解でいいでしょうか。
- 馬越
仰るとおりです。
- 佐々木
先生は39歳で大学院に行かれたということですが、これは同時通訳などをされているときに、「経営がおもしろいぞ」と思って勉強しようと思ったから。
13/20
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