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野口悠紀雄さん
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グーグル・フォビアと言っているんです
- 佐々木
そうですね。「超」シリーズの本をまた書いていただいて、みんなの発想をもう少しストレッチする。
- 野口
それに関して今書いているのがあるんですけれど、今さっき、ITの進歩が止まったように見えると言ったんですが、そうでない面もあってですね。例えば、Gmailなんですよ。これは最近、私は興奮しているわけです。
- 佐々木
例えばどういうことですか?
- 野口
つまり、データをネットワークの上に上げられるから、PCに置いておかなくて済むわけなんですね。
- 佐々木
はい。でもGmailって関係のない広告がついてきて恐ろしくありません?
- 野口
見なきゃいいんですよ。でもね、そこが重要なんですよ。
- 佐々木
読まれているみたいで気持ち悪い。
- 野口
「みたい」じゃなくて、読まれているんですよ。そこを克服するかどうかが決め手なんです。私はそれをね、グーグル・フォビアと言っているんですよ。専門家ほどグーグルに対して恐怖心を抱いている。私のすべてをグーグルに握られていると。ITの専門家でGmailを使う人なんていませんよ。あんなのを使ったら何をされるか分からない。明日、CIAが来て、「お前を逮捕する」って言われたって、しょうがないかもしれないということなんです。事実そうなんです。そこを克服するかどうかなんですよ。克服できたら夢の世界で。
- 佐々木
それって今日、初めの方にお話された、権利を守ることと、公開性についてのことですね。
- 野口
そこは発想の転換がないと無理ですね。
- 佐々木
開きっぱなしにしながら成長するとか、ちゃんと利益を生むとか、幸せになるとかということを。
- 野口
グーグル・フォビアに関していえば、誰でもすでにもう侵されているんですよ。だって検索サービスを利用しているでしょ。検索サービスを利用したっていうことは、私はどういう言葉に興味を持っていますということをグーグルに伝えたわけですよ。
- 佐々木
そうですね。グーグルは、ポルノとかアダルトとかの検索回数は、世界で日本人が一番多いとか、発表していますものね。
- 野口
日本は、でなくて、個人レベルでいわれる可能性だってあるわけですよ。
- 佐々木
そうですよね、世界で一番この言葉を検索したのは、Eメールアドレス誰々さんです、とか。
- 野口
だからそこはすでにみんな気がつかないうちに、プライバシーを明らかにしちゃっているわけじゃないですか。
- 佐々木
それも、かなり深い、相当のプライバシーですよね。
- 野口
そう。だからもうそれ以上。
- 佐々木
守るものはないですね。
- 野口
もうないですね。もうすでにないということを認識すれば、グーグル・フォビアは克服せざるを得ない。でもこれもやっぱり、かなり大きな発想の転換ですよ。私もGmailは使えなかったんですよ、やっぱり怖くて。でもあるときに発想を転換した。
- 佐々木
それはある意味、すごく透明性のある社会になっていくんでしょうか。
- 野口
それは分かりませんね。グーグルだけが持っているわけですから。昔、ジョージ・オーウェルの推理小説で『1984年』というのがありましたけど、ビッグ・ブラザーという独裁者が国民のすべてを監視すると。グーグルはすでにそれができているわけですからね。
- 佐々木
それも世界中のね。
- 野口
そう。透明じゃないと思いますよ。
- 佐々木
そういう社会で権利を守ったり、ビジネスを成功させたりというのものすごいカギになってくるんですね。明るいんだか暗いんだか分からなくなってしまいました。
- 野口
まだ、彼らのことは、よく評価できないんですよ。転換期の途中だということで。
- 佐々木
ここから先は皆さんに考えていただくということで。
- 野口
そうですね。
- 佐々木
分かりました。本当に話がつきません。今日は長時間有難うございました。また、これからもご指導ください。手帳250万冊目標とのメッセージ、社員に伝えておきます。ありがとうございました。
対談を終えて
村上龍さんのカンブリア宮殿の出演でお会いした野口さん。その時は、手帳のことで盛り上がりましたが、今回の対談では経済から、教育、日本人の将来まで、多様なテーマでの話の展開が楽しかったです。研究執筆に没頭する野口さんの貴重なお時間を頂戴できたこと、光栄です。またお話できることを楽しみにしています。
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