ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第117回 岩切茂さん

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建築家・株式会社TEAM IWAKIRI JAPAN代表取締役
岩切茂さん
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その場所があったから、人が朗らかになれたり
- 佐々木
これからは、どんなことをやっていきたいと考えているんですか? オフィスも、街も、インテリアも、そしてイタリアもロシアも日本もやっているわけですが。
- 岩切
何か、施設をやりたいですね、漠然としているんだけど。もう日本でもたくさん建ってるんだろうけど、コミュニティーの場というか。小さい子がいて、老人がいて、普通の人達がいて。
「こんなものは、なかったね」というものを作りたいというよりも、きちんと、施設とか、そういうものを一つひとつ解いていってあげたいっていうのがある。
それからもう一つは、日本の中でのブランディング。佐々木さんがやっているようなコンサルがあると思うんだけど、それをハードの部分からも押さえている会社って、そんなに多くないと思うので、本当はそういうチャンスがあるんじゃないかと思ってるんだけど。
- 佐々木
そうですね、十分あると思います。施設といったら、学校とかも面白いよね。
- 岩切
面白いよね。だから、今、自分達がいろんなところで勉強させてもらっていることを、最終的にどこかに還元するような仕事をしたいと思いますね。
その場所があったから、人が朗らかになれたり、きちんとしたコミュニケーションがとれるようになったりとか。
今、10軒ぐらい、オリックスと一緒にシニア・アパートメントのインテリアをやっていて、「体に優しい」とかいう甘っちょろい話じゃなくて、「シニアの人達が、居て気持ちのいい空間を作ろう」というのに目覚めていて、そういうことも結構やっていたりするんです。
- 佐々木
以前対談したアシハラヒロコさんも、「間取りで、その夫婦を仲良くさせることも、離婚させることもできる」って言ってましたけど、建築ってそういうことなんですよね。コミュニケーションがとれたり、疎遠になったり。
- 岩切
そういうことだと思う。たとえば、日本の銀行とかに行くじゃない? 銀行って、日本は随分前から、誰とも何もしゃべらなくても、ATMがあって、よっぽどじゃないと銀行員としゃべらないですよね。金でも借りるときには、あるのかもしれないけど。
イタリアではね、僕が学生の頃は、ATMがなくて、とにかく銀行に行ったら、しゃべらないとお金を下ろすことができなかったんです。だから、すごいカルチャーショックで。僕なんか、日本にいるときは、ものすごくおしゃべりだったと思ったんだけど、自分が何をしたいということを、きちんと人に伝える能力が、ある意味、人間として少し退化しているなと感じたんだよね、26歳ぐらいのときに。要するに、「どうして、この人と、ここまでしゃべらないといけないの?」と思う気持ちが出ちゃうというか。
- 佐々木
進化したら、しゃべらなくても通じるようになるってこと?
- 岩切
今、便利ということと、コミュニケーションをとらないっていうことが、同じベクトルを向いているような感じがするんだけど、でも、そこって、行き着いちゃうと、どうなのって。
自分では、すごくおしゃべりだと思ってたのが、やっぱりヨーロッパに学生で行ったときに、もっとしゃべらないと何もできないっていう体験をした。で、そのときに思ったのが、「面倒くさいな」ではなくて「自分のほうが人間的にやばいかな?」と。
たとえば、日本がなくなっちゃって、アメリカかどこか、ヨーロッパのラテン系の国に放り出されたら、しゃべったやつが生き残れるんだなっていう。だから、そういった意味では、そういうのが、銀行の設計とかにもあってさ。
- 佐々木
面白い。しゃべることと、つながること。それが有機的なコミュニケーションの基本だってことですよね。本当に、ぜひ銀行をやってほしいと思うのね。イー・ウーマンも、金融機関の仕事はいろいろあるから、一緒にできたらいいなあ。店舗などの簡単な動線や機能までは提案したりするといいですねえ。
- 岩切
しゃべれる空間、コミュニケーションの空間。
- 佐々木
やっぱり私、今日お話を伺っていて、岩切さんの建築や街づくりって、話をする建物で、話をする街、生きている建物で、生きている街っていうのが、よく分かりました。それは、ものすごい特徴で、パワフルですし、それはやっぱり明るいイタリアが発端だったのかな、と納得したりしました。
対談を終えて
今からロシアへ出張、という直前の早朝でした。もう何年も知っているのに、じっくり話をしたのは初めて。やっぱり、アーティストだ、と思う一面と、やり手のビジネスマンの顔と、そしてイタリアーノからも愛される熱い人柄。このうまいミックスがそこにありました。日本ではまだまだ、と言っているけれど、トヨタや日産の実績がこの対談を通じて知れ渡ったら、きっと、私が声をかけても答えてくれないくらいになってしまうのでは、と心配してしまいました。才能あふれる岩切さん、これからも、近くにいてくださいね。イー・ウーマンオフィスの改築も、お願いします!
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