ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第115回 藤村良典さん

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藤村良典さん
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ぽつんとコンサート後のステージに立ったとき
- 藤村
それに、すごい仕事ぶりだったよね。
- 佐々木
確かによく働いたんですよね、全ての土日と、全ての休みと、学校の合間。たとえば上智大学が2時に終わって、次が夜6時10分からの四谷にある日米会話学院。そうすると青山のオフィスに3時から5時45分とか言って、アルバイトさせていただく交渉して、「時給400円でなく15分100円にしてください」ってお願いして。時計を見て、授業が終わると何分の電車に乗ったら青山のオフィスに何分に着くって。たとえば3時15分とか4時45分で、15分100円で、毎日、1分の隙間もなく働いてましたよね。でも、誰にも頼まれてないし、自分で好きでやっているから、何とも思ってないのね。それに大学生のときは、私は、学校は無遅刻無欠席で、全部休んでいないんですよ。
- 藤村
よく働いたよね、今から考えると。でも、俺たちも働いたもん。俺だって三日三晩寝ないときだって一杯あったし。本当に三日ぐらい寝なくても平気でね。だから、かをりちゃんは、いつもそうだよね。もう、がむしゃらだったよね。
- 佐々木
すごく一生懸命働いたけど、頑張っちゃったっていう体験は一回もないんだけれども、ただ、好きで働いていたという。
- 藤村
だから、仕事が好きだったのよ。
- 佐々木
コンサートって、やっぱり、とても面白くて。現場で仕事をしていても、私、コンサートは全部観てないわけですよ。アルバイト中は、会場の外でこぼれている音を聞いているぐらいで。公演が終わると「ありがとうございます」と言いながら、お客様にご挨拶して、会場を片付ける。公演中は、当時は、チケットの裏に住所を書いている人がいて、その人たちにまたDMを送るように分けたり、そういうことをずっとしてたんですよね。
でも、少し昇格して、楽屋でミュージシャンの通訳をしたり、ケータリングとか、アイロンをかけたり、お世話したりすると、終わる寸前とか、横から客席が見るじゃないですか。すると、最後にお客さんが皆立ち上がって、嬉しそうに拍手したり踊ったりしているのが見えるんですよね。別に、そのミュージシャンの音楽を知らなくても、仮に私が特に好きなわけでなくても、そのお客様の顔をみるだけで毎回涙が出る。感動なんですよね。で、「いい仕事だな」って思ってました。音楽の仕事って、やっぱり感動するからいいな、って。
- 藤村
こういう仕事をずっとやってきて思うのは、今、かをりが言ったように、最後、お客さんが全部無事にはけて、ぽつんとコンサート後のステージに立ったときの醍醐味を、知ってる人と知っていない人は、違うと思うんだよね。だから続けられてきた、そういう感慨深いものがあるから、ずっとやってきたんじゃないかな、と思うよ。それがなかったら、もう、他の儲かるものを……。儲からないんだ、本当に、この商売は。
- 佐々木
皆、感動を届けたくて、一生懸命やっちゃうっていう感じなんですよね。
- 藤村
で、そういう醍醐味があるからやめられない。
- 佐々木
私を、よく育てていただきました。ほんとうにありがとうございました。
- 藤村
育ってよかったよね。皆育ってくれて。
- 佐々木
ぜひ、これからもいろいろ教えてください。よろしくお願いします。今日はほんとうに久しぶりにお会いできて、いろいろ初めてのお話伺って、楽しかったです。有難うございました。
対談を終えて
「かをり、みんないいスタッフじゃない。幸せだねえ。大切にしなさい。会社はスタッフで動くんだからさ」。対談後、御礼の電話を入れると、一言目に、そんなことを言ってくださった藤村さん。「朝から食事してなかったから、美味しいワインすっかり酔っ払っちゃったよ。ご馳走様でした」とも。…… アルバイトを終えてからの25年間で、数回しかお会いしていなかったのに、まるで時間が戻ったかのごとく、昔と同じように温かく大切なことを教えてくださいます。15歳、仕事始めに、このようなやさしい方の会社に飛び込めたこと、幸せに思いました。有難うございました。そして、これからもどうぞご指導ください。
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