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藤村良典さん
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20何億が全部がすっ飛んじゃうわけだよ
- 佐々木
それにしても、今日お話伺っていても、やっぱり藤村さんは、すごく真面目で、いい方ですね。こんな表現は失礼かと思いますが。高校のときは、藤村さんって社長って感じを受けなかったんですが、今やっぱり、経営者としてもすごい方だとおもって。
- 藤村
だってさ、社長って絶対に呼ばせなかったじゃない。「長」って絶対に呼ばせなかったもんね。27歳で独立して、一応、会社になったけどさ、だからって「藤村社長」って呼ばれるとかえって、馬鹿にされてるみたいな気がしてね。
- 佐々木
でも、先ほど出た3大テノールのときの藤村さんの交渉の仕方は、今、私がよく言葉でいう所の、完璧な「giver」なんですよ。「与える」という、太陽政策とでも言うか。取引をしようとか、姑息なことをしようとか、全然なくて、フルに藤村さんが与えるという、開放された感じって言うのかな。本当に、ものすごいものを見せていただいたと思っています。あのときに通訳として間に立っていながら、ほんとうに貴重な体験で、すごく勉強させてもらいました。
- 藤村
だってさ、やってもらわないと困っちゃうから。
- 佐々木
そうですよね。でも、ああいうときって、けんけんがくがくとする人とか、態度が怒ってくるとか、いろいろいるんだけど、藤村さんは、ずっといつもと変わらなくて、終始穏やかでいらっしゃったじゃないですか。土壇場のときって、その人の全てが出るでしょう。だから、深く尊敬しているんです。あまり怒らないですよね、藤村さんは。
- 藤村
怒らないけど、あれでパニックになって、「やらない!」なんて言われちゃったら、なくなっちゃうから。そうしたら何万人もの人が困るわけだしさ。俺の中では、どうしようかと思ったよ。
- 佐々木
すごかったですよね。私は、こういうことが毎回、公演の前には行われているのかな。藤村さんは、こういった仕事をされてきているのかと思って、びっくりしたんです。
- 藤村
だって、あのときは20億でしょ? 売上は三十何億だけど、総経費二十何億だから。それが、あいつの一言でノーと言われたらさ……。
- 佐々木
十何億の利益が吹っ飛ぶ、ということだったんですね。
- 藤村
そんなもんじゃないよ。二十何億が全部がすっ飛んじゃうわけだよ。そうしたら、売り上げが三十何億あるんだから、払い戻ししなきゃならないわけじゃない? その上に、二十何億の経費さ、払えるわけないじゃん。
- 佐々木
そうですよね。
- 藤村
本当に、あのときは辛かったね。かをりには、悪いなと思うんだよ。ホフマンなんか、「何だよ、触るなよ。お前、関係ねえだろ」みたいなことで、「こいつ、何?」って言う感じだったよね。「お前の通訳じゃねえか」みたいな。
- 佐々木
そうですね。いや、私は、できることをしなきゃと思っただけなんです。
- 藤村
よかったよ、でも、あいつが分かってくれて。
- 佐々木
そうですね。無事にコンサートができて、ほんとうに良かったです。
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