
最初はやはり、声から入りましたね。彼女の声。
わたくしがすばらしいなぁ、太刀打ちできないなぁと思って心から尊敬するのは、歌手の方なんです。歌をうたって、ほんの3分で人の心をわしづかみにしてしまうくらい、すごいエネルギーがあるからです。しかも、それが一生の思い出になったりします。
そういうことのできる方というのは、神様が創造した存在なんだと思いますね。その一人がこのマリア・カラス。
音楽とは美しいもの、人間が生きていくためになくてはならないものだと思うんです。
わたくしはクラシックがとても好きで、小さい頃にバイオリンを習っていたんですが、ピアニストになりたいと思って転向したんです。主にロマン派の楽曲が好きなんですけれど、そこから歌曲やオペラといったものにつながっていきました。
母親の影響でしょうね。両親は昔から園芸が好きで、美しいものに囲まれていた生活の中で、音楽は切っても切れないものだったんです。母はいつもクラシックを聴いていまして、歌曲もそうですし、オペラのフレーズなんかを口ずさんだりしていたんですよ。
ですから、それまで声しか知らなかったカラスのビジュアルを見たとき、大変ショックを受けました。「ああ、この人なんだ」って。あのインパクトのある目と口、とっても個性的なお顔をしていらっしゃる。そしてあの存在感。どんな衣装を着ても、どんな歌をうたってもはまってしまう。不思議ですよね。「華がある」というのは、こういう方のことをいうんでしょうね。
人間は、こういう感じの人、というようにいろんなタイプに分けられてしまうんですけど、その中でマリア・カラスは、もうこの人しかいない、唯一無二の存在です。歌の才能はもちろんですし、美しさ、それから気品。そういったものを兼ね備えた稀有(けう)な方です。この地球上に存在したこと自体が、稀有。
波瀾万丈の人生にしてもそうです。こんな人生は、ほかの人には絶対に無理。
恋もそうですが、歌手として成功を手に入れた後の転落、そしてカムバック。そういったことのすべてをエネルギーに変えてしまう強さ。それがマリア・カラスのとてつもない魅力につながっているんでしょうね。
幼少の、決して良いとはいえない環境から、これだけのスーパースターになっていったわけですから。やはり天性のものですよ。
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