ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第7回 西岡 郁夫さん

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モバイル・インターネットキャピタル株式会社 代表取締役社長
西岡 郁夫さん
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社長に直談判、そして円満転職
- 佐々木
23年間いて、自分を育ててくれたいい会社を去ろうとお考えになったのは、大きな理由があるのですね?
- 西岡
コンピューター事業部長の一つの大切な仕事はパソコン事業でした。パソコン事業で成功するには、常にインテルの最新のCPUの情報を入手して、それを使って他社より早く最新のパソコンを開発するのが鉄則です。だからよくインテルに足を運びましたしね。実はインテルと秘密裏の共同開発プロジェクトを作って僕はそのシャープ側の責任者でした。
一方的な契約を押し付けてこられて、一人で下手な英語で闘いましたね。ガンガンやりました。
それでインテルから「来ませんか」という話があったんです。
インテルの当時のCEOのアンディ・グローブが筋を通して、当時シャープの社長だった辻さんに「西岡をください」と言ってくれたんです。
- 佐々木
かっこいい!
- 西岡
二人のトップの話を僕は知らなかったのですが、その後、辻社長が「あんたの人生のことだし、勝手に葬ったらいかんから、事後報告しておくけれども……」と、そういう話があったことを話してくれました。そして、「断わっておきました。いいでしょ」と言われて。
ちょうどその時、新製品の量産開始に向けて最後の詰めの段階で、ものすごく忙しかったので、「もちろん断っていただいて結構です」と、インテルのことは忘れることにしました。
そうこうするうちに無事、新製品の量産が始まって、その時点でやっと「あの話、おもしろそうやなあ」と考え始めたんです。それで辻さんに「パソコン関係の仕事をやっている人間にとって、インテルという会社は魅力的だし、ぜひ行きたい」と申し出たんです。最初は「ダメだ」って突っぱねられましたが、「土曜日、社長室に来い」と言われて、土曜日の誰もいない社長室でじっくり話を聞いてくれました。合計2回行きました。
土曜日は誰にも邪魔されずにゆっくり話を聞いてもらえるのですが、そのかわり秘書もいないのでお茶が出ず、のどが渇きました。
2回目に行く時、天王寺駅(大阪府大阪市)で缶入りのお茶とプリンを2つずつ買って、持参しました。すると、「おまえ、おれがプリン好きやって、なんで知ってんねん?」と言われて。二人でそれをおいしく食べながら、再度、「インテルに行かしてほしい」という話をしたわけです。
「なあ西岡、10年後に2人で、『お前が辞めるとか言って、社長室でウダウダしゃべったなあ』と、ニコニコ笑いながら話し合えるようにしような」と言われました。つまり会社に残れということです。それでも一生懸命説明し続けたんです。そしたら最後に辻さんが「お前に向いてるかもしれんから、やってみるか」と言ってくれたんですね、「わかった、じゃあ行け」と。
そうと決まると、辻さんは、幹部会のみんなのいる前で、僕の手を握って「西岡はインテルに行くから。頑張れよ」と言ってくれた。社長自ら、「西岡は平和に出たよ」ということをみんなに見せてくれたんですね。
いまだに半年に1回くらいは辻さんと一緒に食事していますし、退職後もシャープには自由に出入りできるわけです。よく、後ろ足で砂をかけるような形で会社を辞めてしまって、その後行けなくなるということがあるでしょ。インテルにとっては、シャープさんは大事な顧客です。そのシャープに出入りできなくなると困るわけですよ。
そういうことも辻社長が配慮してくれたわけです。本当に感謝してます。
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