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池上 彰さん
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伝える側も中途半端な知識しか持っていなかった
- 佐々木
それは、子どもが相手だから、どうやって説明しようかと始めたということですか。
- 池上
はい、その前に首都圏向けのニュースのキャスターやっていたときから、みんなわかっていないということにずっと気がついてはいたんですが、本当にわかっていないということがわかったのは「週刊こどもニュース」をやってからですね。よく普通のニュースで「政府は…」ってありますね?
- 佐々木
えぇ。
- 池上
子どもはね、「政府って何?」と聞くんです。
- 佐々木
そうですよね。
- 池上
我々は、「政府は…」ってこう普通に言っていますよね。でも、政府って何、って言われると、政府を子どもにわかりやすくするためにはどうしたらいいんだろうと、こう思うわけです。
すると、自分は政府ということを本当に曖昧な概念しか持っていない、本当にきちっと説明できるだけの知識を持っていないことに初めて気がつくわけです。愕然とするんですね。
あるいは、「官房長官がこう言いました」と言ったら、「週刊こどもニュース」の最初のお母さん役の柴田理恵さんが、「官房長官って何ですか」って聞くわけです。そうしたら、スタッフの1人がね、「うん、総理大臣の女房役です」って言ったらね、柴田さん、「えっ、エプロンしてるんですか?」って言うわけですよ。女房役っていう言い方もね、いかがなものかと思うんですが……。
- 佐々木
本当(笑)。
- 池上
官房長官の役割をちゃんとよくわかっていなければ、子ども向けに語る、解説する、説明することができないわけですね。みんなが何を知らないかっていうことを知った、と同時に私達、伝える側がいかに中途半端な知識しか持っていなかったか、本当に詳しく正確に知っていなかったっていうことがわかりました。
- 佐々木
逆に大体わかっていて、詳細定義を知らないからこそ、みんなにとっての共通言語である専門用語で話していた。専門用語を使わないようにと思ったら、中身がすかすかだったっていうことに気がついた……。
- 池上
そういうことですね。ある種、記号として使っているんです。「政府は」って言って、みんな何となく了解事項としてやっている。だけど、政府って何よ。それは総理大臣のことなの? 内閣のことなの? ってなったときに、そういえばすごく曖昧に使っていたなっていうことですね。
- 佐々木
そうですね。
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