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川合アユムさん
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このまま一生やっていくのか、という疑問
- 川合
仕事を失った時に、ゲーム機をリースしていたあるおじさんから「お前おもろいから、ちょっと俺と組めへんか」と声を掛けられて、その人と組んだわけです。
しばらくスナックを回ったりして、何か収入にならないかなと探しました。見ていると、コインのゲームも規制がすごく厳しくて、あるのは遊び程度のゲームだったんですね。「電気仕掛けはあかん、何か紙のゲームを作ろう」って、そのおじさんと一緒に組んでゲームを作ったんです。
紙のね、三角くじ640枚をつけたんです。天六の印刷所で3,000円で作ってもらって、それを3万円で売ったんですけど。当たりくじが入ってるんです。当たる確率は極めて低いんだけど、あたったら10万ポイントと書いてあるんです。10万円あげてもいいし、10万ポイントに相当するお酒をあげてもいいし、店とお客さんの間で遊んでもらうような。
- 佐々木
台紙っていうことですか? 3万円で買う人がいるの? そもそもそういうものを自分で作れるんですか?
- 川合
お店が買うんです。お店で作ろうと思ったら大変ですからね。店の人は3万円で仕入れても、何枚以上売ったらペイできるし、当たりの数が極めて少ないですから、それが当たりが出ないまま何百枚売ったら、もうかるわけです。たとえば、200枚売ったら6万円回収できますよね。
もちろん、当たりが10万円出てしまうと急に利益はなくなっちゃいますけど、そこの駆け引きができるのがおもしろいっていうことで、一晩に2つも3つも使うお店が出てきたんです。
狙いはカラオケスナックで、当時カラオケは、100円玉をジャラジャラッと灰皿に入れて、それを機械に入れてたんですね。
- 佐々木
それいくつぐらいのころ?
- 川合
16〜17歳のころですから、20年ちょっと前ですね。帰る時には、灰皿に残った100円玉が誰のお金だかわからない。そんなお金で遊べるゲームを作ろうというのがコンセプトだったんです。意外とお客さんとカウンターの中の女の子とね、コミュニケーションがうまくいくようになったという店は、日に何セットも使ってくれるから、それでまた収入がポンと戻ったんです。
全部直販してたしね。オートバイの後ろにボードをくくり付けて一軒一軒売って回って。
- 佐々木
二人で売ってたのね。それで?
- 川合
それでまた収入がポンと戻った時に決心したんですね。「もう夜の世界で生きていくのは自分には向いてない」と。
- 佐々木
向いてない? 聞いていると向いてそうなんですが……。
- 川合
いくつかの理由があったんですけど、空しくてね。「しのぎ、しのぎ」って言って、収入のことを「しのぎ」と言うんですけど、その日をしのぎながら生きていくような、そんな生き方を「このままずっと一生やっていくのかな」と思うとちょっと自分には向いてないなと。
なんかすごいしんどくなったんですよ、急に。お金だけをやりがいにしてたんで、その時は徹底してやってたんですけど、切なくなってきたんです。それに、そのおじさんと組んでやってたんですけど、一人の力の限界ってのをすごく感じたんです。
なんかおもしろくないな、ダラダラ、フラフラ。自由は自由だけど、あまりおもしろくないなと。
- 佐々木
そのおじさんって、何歳ぐらいの人ですか?
- 川合
当時50歳ぐらいですか。よくかわいがってくれたんですけど、辞めるって言ったら、最初かなりゴチャゴチャ言ってました。最後の日にマンションで、おじさんが手にタオルを巻いて、で僕も手にタオルを巻かされて、マンションの中で本気で殴り合いさせられて(笑)。
- 佐々木
最後の日に殴り合い(笑)。
- 川合
そうそう。最初は一方的だったんですよね。一方的に殴られて。でも「かかってこい、かかってこい」って言うから、僕も最終的には闘ったんですけど。
- 佐々木
映画みたいですね。
- 川合
いいおじさんでしたね。それ以来一切連絡ない、一切。
- 佐々木
どうしてるんでしょうね、今。
- 川合
どうでしょうね。もうおじいちゃんですよね(笑)。
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