ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第59回 野口 健さん

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野口 健さん
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エベレストに捨てられていたボンベから
- 野口
ただ、それを救ってくれたのが、1枚のハガキだったんです。いきなりハガキが来たんです。読むと、「野口君のエベレスト清掃はすばらしい。ただ、私が1973年にエベレストに行ったときは、前年のイタリア隊のゴミに助けられました」とだけ書いてあるわけです。それが橋本龍太郎さんだったんです。意味がわかんないですよ(笑)。
彼は日本山岳会の幹部ですからね。清掃に行けばゴミがいっぱい出てくるのがわかってるから、釘をさしてきたと思ったんです。
「この野郎」と思いましたよ。「ついに橋本龍太郎を担いでつぶしにきた」と。で、闘志が燃えました(笑)。彼は橋本隊として3〜4回、エベレストに行ってるんで、行ったらゴミはあるだろう。彼のゴミを絶対に見つけて、日本に持って帰ってきて、暴いてやろうと思ってね。
そしたらやっぱり、出てきたんです、ボンベが。それを日本に持って帰ってきて、橋本さんの事務所に電話しました。でも会ってくれない。そこで、しょうがないから「いやあ、先生がエベレストに行った当時、僕はまだ高校生で、あれに感動しましてね、あれで登山家に…」って言ったら、秘書がだまされたんです(笑)。僕は、当時の記憶まったくないんですけどね(笑)。
「実はあのう、今日、1988年の先生の忘れ物を持ってきましてね」って。ボンベの裏を見ると、書いてあるんですよね……。
- 佐々木
団体の名前や、何年の、とかが?
- 野口
それを見た瞬間、顔が真っ赤になって、眉間のシワがすごいんですよ。「あっ、これはいかんな」と思ったんですが、彼はスッと立って、「たしかに、これはわが隊のゴミです。参りました」って言って、しばらくずっと立ってるんです。
彼は日本山岳会の最高責任者ですからね。その後、彼は、僕が山岳会からやられてるって知りまして、彼が表に出ていって、メディアとかいろんなところで、「わが隊のゴミがたくさんある。でも、それを野口君が拾ってきてくれた」と話したんです。そうしたらね、僕は感謝したんだけど、テレビを見た多くの人から橋本事務所に抗議がすごくて。でも、彼は話し続けてくれました。
- 佐々木
それで、やっと清掃登山ができるようになったわけですね。
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