ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第59回 野口 健さん

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野口 健さん
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正しい判断が出来れば「成功」でしょう?
- 野口
長年ヒマラヤに行っていつも見てるんですが、ゴミを捨てる隊ってあるんです。ゴミを捨てる隊と遭難者を出す隊がね、重なってくるんですよ。
- 佐々木
えっ? ゴミを捨てる隊と遭難者を出す隊? 重なるっていうのは?
- 野口
同じ隊ってことです。どういうことかっていうと、まあ、これは僕の考えですけどね。たとえば、悪天候が続きますよね。5月の下旬になって悪天候が直らないと5月の下旬にはもうモンスーンが来るんで、だいたい5月の10、15、20日くらいで、「今シーズンはもうダメかな」とか、だんだん見えてくるんですよ。
で、悪天候がワーッと続くと、5月20日頃ね。ベースキャンプにいるイタリアもスペインもカナダもそうなんですけどね、ワインを持ってきて、コンコンコーンってあちこちから夜、コルクを抜く音がしてくるんです。それから、ダンスパーティーが始まって。
- 佐々木
へえ。どういうこと?
- 野口
みんなでもう、ダンスをしてね。彼らは、「もうダメだから、酒を飲んで、ダンスして、そんでまた来年よ」と、楽しそうに「チャオ!」って言いながら帰っていくわけです(笑)。その横で韓国隊やかつての日本隊は、そのまま悪天候の中に残って、突っ込んでいってしまう。とにかくもう、追い詰められていくわけです。
- 佐々木
国を背負っちゃっているみたいな感じなんですね? ここで帰れない、と。
- 野口
ヨーロッパの人たちはねえ、やっぱりもう、本当に遊んでますよ。何をもって「成功」で、何をもって「失敗」か、ってことをよくわかっているんですよ。だから、すごい悪天候の中では、正しい判断をして、アタックを止めて帰る。それも「成功」なんですよ。ところがね、日本人はそうじゃないんです。
- 佐々木
そうですよね。野口さんは、決断のご経験があるでしょう?
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