ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第47回 伊藤 隼也さん

47 |
写真家・ジャーナリスト(医学ジャーナリスト協会会員)
伊藤 隼也さん
|
|
|
右脳と左脳、直感とロジックを育む
- 伊藤
僕はものを考えるときに、なるべく直感とロジックというのを並行して考えるんですね。どっちもバランスがよくないといけないと。それはとても大切なことです。
自分の直感をシャープに磨くというのは、例えば、三歳の子どもにスキーを教える際に、当たり前ですが理論のないところでスキーを教えるんです。理論は、小さな子どもにはわからないです。まずはイメージトレーニングのDVDをずっと本人に見せていて、スキーの板を履かせた。
- 佐々木
それはプロのスキーヤーが滑っているような映像ということですか?
- 伊藤
プロの人が子どもにスキーを教えるDVDがあるんですよ。それを、行く前にずーっと2週間ぐらい見せていると、やっぱり子どもはイメージするんですよね、自分が滑ってる姿を。
で、次に何をしたかというと、教則通りに、片足だけスキーを履かせて、スキー場で歩かせた。そうすると、片足だけは地についていて、片足はスキーを履いている。だいたいの人は、両足いっぺんに履かせるんですが。
- 佐々木
そうですね、思いもつきませんでした。
- 伊藤
そうなんですよ。それがやっぱり、いい意味での教育なんですよね。僕はそれを教則DVDで知って、まず片足に履かせて、スキー板は滑るものということを上手く本人に理解させると、小さな子どもでも恐怖感を感じないでスキーはコントロール! できるということを、理論ではなくて直感で感じるわけですね。
次に、その直感をさらに上げるためには、両足に履かせます。うまくいけばまともに滑りますよね。滑れるようになったら、でも、今度は上手く止まれないんです。で、止まれないんだけれど、じゃあみんな普通の大人はどうするかというと、ボーゲンヘルパーをつけて安全な環境で、子どもにステップアップの幅の小さいところで努力させていく。それもしなかったんです。
どうしたかというと、背中にひもをつけて、「止まれなきゃ、俺が止める」って。だって子どもにとっては、ずーっと!滑っている方が楽しいですよね。
- 佐々木
ひもをつけたの? それはいい考え!
- 伊藤
そうすると、止まれないけど滑れるようになるんですよ。それってやっぱり、直感の訓練なんですよね。滑っていて、スキーが楽しく滑れるんだということを子どもにまず覚えさせないと、絶対に子どもってスキーをやらないんです。どんなに教えても。ただ、辛いから。
- 佐々木
それは、私です(笑)。私は今まで一度もスキーをやったことがないんです。小学校のときは5年生がスキー合宿だったのですが、私が5年生のときから中止。
その後も、やりたいっていう時にいつも何か運が悪くスキーツアーが中止になったり、行こうとするとダメになったりというのが何回かあって、自分の中で「縁がない」って結論づけてたんです。
- 伊藤
僕もそうだったんです。
- 佐々木
本当に?
- 伊藤
ある日、突然。スキーが大好きになるなんて想像もつかなかった。まあ、チャンスは待っていてもこないかな。30歳を過ぎて始めたんですが、大変でした。子どもとは逆で、理論は解っても体がついていかない。
たぶん、プロスキーヤーは直感で感じたものを、後にきちんと理論で学んでさらに上手くなる。そういう、まさに直感を論理とあわせる。バランスがいいのが一番いいですよね。だけど直感だけを磨いていくと、医療の世界もそうなんですけど、最初はけっこう苦しいんです。被害者にたくさん会うと、いろんな直感が自分の中に出てくるんです。
社会に何を伝えるのが一番良いのか。どうしたら、この人たちを救済できるのか。また、同じ悲しみを他の人に味わせないようにするには何をしたら良いのか?あの事案とこの事案を組み合わせると、もしかするとこういうロジックができるかもしれない、っていう直感。それを論理的に考えて、順序だてて、いわゆる、改善などのために根拠を作るということについて、まったくやったことがないから。
- 佐々木
それがまさに、プロのジャーナリストですよね。数々の情報が直感的に頭の中で結びついて、一つのある確信に似た想定ができる。それを、客観的にデータで裏づけをしていく。常に、まったく違う結末があることも理解しつつ。
- 伊藤
そう。四十の手習いみたいなもんですね。でも、それを組み合わせていく中で、例えばどこかの病院に自分がいきなり行っても、直感で見える世界があるわけです。その直感で見える世界に対して、後に自分できちんと論理を組み立てていく。それが完成すると、ものすごくおもしろいんです。
6/23
|
 |
|
|