ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第43回 菅原真樹さん

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フリーダイビングトレーナー・アプネアフォトグラファー
菅原真樹さん
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「いつ撮ってたの?」が最高に嬉しかった
- 佐々木
シンプルに潜れるっていうのは、どういう…。
- 菅原
無駄がないんですよね。美しいです。
- 佐々木
美しい。それは先ほどからお話しになっている、水に入れていただくっていう謙遜な気持ちと、要するに水に入っていく時の、水と体のすき間がないっていうか、スーッて入っていくっていう、そういう……
- 菅原
そうですね。末子さんの中には、もう小さいときからの延長でね、楽しく仕事をするっていうことが、非常に根本的にあるのですから、たぶんその意識から無意識にそういう泳ぎをマスターされたんでしょう。小学校高学年だったかな、そのときにはもう、自分でイガイっていうムール貝に似た貝を採って、それを売って、いろいろなものを買った、って。
私は、写真を撮らせていただく前に、その方といろいろとお話をするんです。末子さんのことを知って、初めて伺ったとき、最初はとても嫌がられた。彼女のところに何人もの人が取材にくるんだそうです。で、あまり良い体験をされてこなかった。
海女さんは、素潜りでしょう。でも20メートルものところで撮影するために、たいていの取材班はたくさんの機材を使う。ボンベを背負えばブクブク泡も出るし、音もする。末子さんは、静かに海に入り、海の中での小さな音の変化さえも聞きながら泳いでいますから、機材を背負った取材スタッフが近くにいるのは、好まないのです。
- 佐々木
そうですよね。静かに、神聖な気持ちで海に入れていただき、仕事を長年続けている方にしてみれば、よそ者がずけずけと、音を立てて侵入してくるようなものですものね。感覚も鈍るでしょうし。
- 菅原
でも私といろいろ話しているうちに、わたしが機材を一切つけないこともわかってくださった。で、静かに、気づかれないように入りますからと、一度、一緒に潜らせていただくことになったんです。
さっきも言いましたが、どの世界チャンピオンもかなわないとおもうほど無駄のない、美しい泳ぎで、私は圧倒されたんです。
- 佐々木
それで写真も撮らせていただくことに。
- 菅原
そう。でもね、かをりさん、すっごく嬉しかったのはね、写真を撮り終えてあがった後、末子さんが「いつ撮ったんかい?」って聞いたことです。よかった。彼女の邪魔をしなかったんだ、って。何よりその言葉が私は嬉しかったですね。
15/25
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