ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第40回 枝廣淳子さん

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同時通訳者・環境ジャーナリスト・セルフマネジメントコーチ
枝廣淳子さん
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“良いこと”が経済価値を生むように
- 佐々木
ユニカルを作って18年、イー・ウーマンは5年目なんですが、やっていることはNPO的かもしれません。わたしの中では「青年の主張」みたいなビジョンがあるのです。だからかもしれませんが、わたしたちの活動を多くの人が褒めて下さるんですね。「佐々木さん、いいことやってる」と。
でも、社会が変わらないのはなぜか。そういう「いいこと」を経済界と離れたところでやっていては駄目なんではないか。経済界・政界・メディアを牛耳ってる男性たちに気付いてもらうためには、こっち側(NPOサイド)でやってちゃ駄目なんですよね。
イー・ウーマンが株式会社として挑戦しているのは、そこなんですね。どうやって経済価値を見出すか。経済価値を作る=経済界の人たちにお金を払ってもらうサービスを作るということ。その点は枝廣さんのお仕事の中でも感じられることだと思うんですが、どうですか。
- 枝廣
この春にイーズという会社を作ったのもそこなんですね。自分のやってきたことを考えると、最初は通訳として「こんな問題があります」とか「森林が壊れかけています」とか、誰かがしゃべるのを訳していたわけですよね。まさに横のものを縦にする仕事をしていた。
そのうち、“環境ジャーナリスト”として自分で取材に行くようになり、取り組みをしている人の話を聞いて、自分で紹介できるようになった。それはわたしにとっての“一歩”だったんです。ただね、それだけじゃなくて自分でも何かをやりたくなったんですね。
たとえば「間伐材」でイーズ特製のマウスパッドを作ったのですが、これがもし100枚売れると間伐材一本が有効に使える。捨てずにすむ。自分の活動でほんの少しでも物事を変えていけるんです。
もうひとつは、環境を前面に出すよりも、英語教育や、セルフマネジメントセミナーとか、そちらを前面に出して、その中で取り上げる教材を環境にする。これを「トロイの木馬作戦」と呼んでるんですけど(笑)。そうすると、環境を前面に出すよりも多くの人に届くと思うんですね。
環境活動をもっと広めるためには、環境をやる人が、赤貧の、爪に火を灯すような「貧しいけど、自分たちは頑張ってます」というのでは、絶対広がらない。だからイーズは小さい会社ですけど、楽しい活動をして成り立っていますし、その上、環境にも良いことをしている。今、たくさんのNGOがあって、みんな熱い思いでやってるけど、活動を続けていくポイントも、そこなんだと思います。
- 佐々木
熱い意思があるからといって衣食住がいらないわけではない。当然ですよね。たとえば、NGOの人が外車に乗っていると「悪いNGOだ」と言われるのは困ったものですよね。
逆に言えば、経済を動かしてる人たちが、「枝廣さんのやっていること、すばらしいね、今度お昼ごちそうするから話聞かせてよ」じゃあ、困るわけです。彼らが時間もお金も使って、NGOが日々行っている活動の情報や労働を買うことが、普通の商品を買うのと同じバリューであると認めないと駄目なわけです。
イー・ウーマンが目指しているのもそうですが、無形のものに価値をつける。「これは価値があるんだ」と言い続ける必要があるんですよね。
- 枝廣
その通りだと思いますね。日本の社会では無形のもの、情報もしくはアイデアにお金を払うということがあまりないので受け入れにくい。特に環境とか福祉とか、「良いこと」をする分野でお金をもらおうと思うと、よけい大変なんですね。
各地でお会いする方の中には、「枝廣さんには社会的にも大成功してほしい、お金持ちになって、『環境やるとああなれるよ』ってそういう人になってほしい」と言ってくれる人もいる一方で、善意の集まりがあるので来て話をしてくださいって言われて、「講演料はこうなってます」と言うと、「え? お金とるんですか?」という人もいる(笑)。
まあ、やり続けること自体が社会を変える力になればいいなと思ってるのですが。企業に対するアドバイスをすることもあるのですが、それに対してもお金を払ってもらえる場合ともらえない場合がまだありますし。
- 佐々木
そこなんですよねえ……。消費者・市民の教育と、経済界・企業人の教育、両方必要ですよね。
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