ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第40回 枝廣淳子さん

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同時通訳者・環境ジャーナリスト・セルフマネジメントコーチ
枝廣淳子さん
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飛行機のビスを抜きながら飛んでいるような、地球
- 佐々木
最近のお天気は、台風は多いし、長雨は続くし、環境ジャーナリストの目から見ると、これは非常に危険信号ですよね?
- 枝廣
そうですね。特に台風やハリケーンは発生数も増えているし、しかも勢力が強くなっていますよね。これは温暖化の影響ではないかと多くの科学者たちが言っています。海の温度が高いと、それがエネルギーになって台風になるんですけど、温暖化だと気温も水温もあがるので、おのずと台風の数も増える。
もうひとつは、この間の新潟や新居浜もそうですけど、雨量は昔と同じなのに、簡単に崩れるようになっていますよね。それは温暖化というより山が荒れていたり、高速道路を通すために山を切り開いたために、簡単に崩れるようになった。
- 佐々木
家で言うと、柱を一本取るようなことを自然に対してしてしまっている、ということですね。
- 枝廣
そうなんですね。よく環境畑の人たちが使うフレーズに、たとえばダムを作るとか高速道路を作るとか、そういうのは「飛んでる飛行機のビスを一本ずつ抜いていくようなものだ。いつ空中分解するかわからない、それがわかったときにはもう遅い」と。今回の台風や洪水とその後の被害を見ていると、そんな感じがしますね。
- 佐々木
「台風が多い、いよいよ温暖化だ」とか、「夏にこんなシャワーみたいな雨が降るなんて、亜熱帯気候だわ、温暖化だわ」ってわたしたちは今日常で言いますけど、温暖化によって地球が弱くなってしまっているという側面はあるものの、それだけでなく、わたしたちの日々の生活でやってきていること、つまりブローが効いてきている。
- 枝廣
そうなんですよね。今、荒れたり、高速道路で切り開いたりして地盤が緩くなっている所に住んでいる人たちというのは、何代も前からそこに住んでいるから、そこが危険だとは全然思わないのだと思います。
- 佐々木
このくらいの雨なら何十年も前からあったし、大丈夫だという気持ち。山は今できたわけじゃないし、ずっとそこに住んでて、これまで雨も降ってたし、地震もあったわけだし。でも、もう、その山の力が、弱くなっている。
- 枝廣
まさか、と思いますよね。それと同じことがエスキモーの世界でも起こっています。彼らは氷の上に家を作って住んでいますよね。今、温暖化で氷が溶けて、とても危ない状況になっている。それがわかる、外から来た科学者は、ほかの場所に移るように伝えるのだけど、エスキモーは「自分たちは代々ここに住んでいるのだから、危ないわけがない」と言って動かない。これでは本当に危なくなった時、とても被害が大きくなると思うんですね。
温暖化もそうですが、問題を語る時、どうやって温暖化自体が起こらないようにするかということと、残念ながら起こりつつあるのは事実なので、それに対する適応性をどう高めるかということ、両方でやっていかないといけないんですが、それは問題を認めるということにもなるので、わたしもこれまではあまり考えたくなかったんです。
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