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米倉 誠一郎さん
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期待のコーディネーション
- 米倉
やばいです。
- 佐々木
やばいですか(笑)。何が悪いんでしょうか。
- 米倉
何もかも悪いんですよ。悪いということがわかっていない、っていうことが最悪。こういうことをやってたら勝てない。
たとえば、僕のいる一橋大学も独立行政法人になって、4月からめでたく団体職員になったんです。でも、誰もその意味やビジョンをわかっていない。「なんのためなの?」って言うと、「なんのためなんだろうな……」って。
それから僕、総合科学技術会議の委員なんですね。これ、日本は科学技術が大事だと、17兆円と24兆円、過去の2年間に使ったわけ。計41兆円。だけど、それをどれくらいの人が知っているでしょう。政策って、ある意味「期待のコーディネーション」だと思うんですよね。とにかく、こっちのほうに行けば新しいことが生まれる、新しいことができる、何かが変わる、という期待をコーディネートする。でも、そういう発言をする人がいなくなった。
- 佐々木
明確なビジョンをうたわないで進んでる、ってことですか。3月まで内閣府の総合規制改革会議の委員をしていたんです。そのときにわたしも同じようなことを思って発言しました。
規制改革をして規制を外すというのは国民であるわたしたちに選択の自由が与えられ生活が豊かになる、という大きなビジョンがあるわけですよね。そういった一番大きい目的を常に言わないと、メディアも、それを読む人も忘れちゃうんじゃないかって。
- 米倉
オウムのように繰り返すということね。
- 佐々木
それが日本にはないのに、今、上海ではあるということなんでしょうか。
- 米倉
あのね、この間北京外語大学の学生と話しててすごいなと思ったのは、思想統制能力。上海、つまり中国って、個人の話とかは自由に言うわけ。でも僕が「でもさ、一国二制度っていうのは破綻するぜ。やっぱり経済で自由になったら、思想も自由になりたいんだから」といった時に、ほとんどの学生は同じ答えをする。これってすごいなと。
日本はこの種のことで、みんな違うけど「これだけは一緒だね」というのがない。かつて、池田隼人元首相のとき、「所得倍増計画」とかでは一致したんですよ。一生懸命働けば豊かになるんだ、給料は倍になるんだと。田中角栄さんもいいにせよ、悪いにせよ、あの種のことでみんな一点を見たんですね。だから土地も上がったし、競争もした。
それからしばらく何にもなくって、竹下登さんの1億「ふるさと創生」なんて、ただばらまいただけでしょ。小渕さんの商品券(地域振興券)配布も同じですよね。
で、今度の小泉さんは郵政民営化しかいってないんだけど、あれが大事だったのは、「そうか、官主導から民主導の国なんだ」と、何となくほのめかした。それを今はもっと志高く言い続けないといけないし、具現化しなくちゃいけない。その種のことが政治家もきちっと言えないし、企業も駄目だってことが言えなくなってきている。そこが今の日本の、まず第一にまずいところだと思うんです。
11/23
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