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松井龍哉さん
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バカラのパーティーで大田区の職人が男泣き
- 佐々木
すごくよくわかるんですけど、そのお話とロボット創りって、どんなふうにつながっているのでしょう。たとえば犬の形をしたロボットで遊んだら、子どもが生き物を育てるってことがわかんなくなっちゃうのではないか、なんて疑問が沸いたりしますよね。
今までのお話とロボット創りはどういうふうにつながっていくのかを教えていただけますか。
- 松井
やっぱり、そこが今日本の技術が抱えている問題ですね。物創りの観点で見て、日本には職人さんっていらっしゃるじゃないですか? 僕たちもロボットを大田区の人たちと一緒に創っているわけです。いろんな職人さんと話をして思うんですが、日本の職人さんは創ってるここに宇宙のすべてがあって、1ミリとか1ミクロンの単位で、何かができるということで全宇宙を創っている。
最近イタリアに行ったり、フランスに行ったりしてますけれど。靴の木型を創っているイタリアの職人さんは、靴を履いてさっそうとレストランに行く人をイメージして、型を彫っている。皮のハンドバッグを創っているフランスの職人さんは、マダムが優雅にそれを持っているところを想像して物を創っている。
人が喜んでくれる姿をイメージした物創りをするかどうかで、でき上がってくるものが全然違う。
単純に、これだけの技術でこれだけの物を創りましたと、機械だけで追求していくとマッチョになる。そんな物の創り方をしていては、誰もその気持ちを伝えられないというのが僕の思うところなんです。
- 佐々木
よくわかります。どんな仕事でも同じことだと思います。創る人の見ている夢や情熱が違うと仕上がりが違う。
- 松井
そう、物を創る場合にプランニングが大事じゃないですか? もちろん物創りじゃなくても、会社でも何でもそうだと思いますけど、プランニングするときにゴールをどういうところに見ているかということで、中のプロセスが圧倒的に変わってきますよね。
効率を考えて、今の経済状態で考えると、どっかの部分は薄く仕事をしていかなかきゃいけないと思うんですけど、やっぱりゴールを高く持っていければ多少無理してもいい。その代わりにゴールでは必ず人が幸せになれるという。
たとえば、この間あのフランスのゲランの調香師に話を聞いたんですけど、非効率でも100%、ちゃんと花から香水を創っているんですって。コストが安く上がるからといって、中にはケミカルなものを使ったブランドもあるそうですが、ゲランでは絶対やらない。なぜかというと、香水は愛する人のために創るものだからだそうです。愛している人に、造花は贈れないという発想なんですね。本物はやっぱり後に残るからって。
だからゴールをどこに見ているか、っていうことが、物創りをする上で非常に大切になってくる。
- 佐々木
わたしたちの生活にもそのまま活かせるお話です。
- 松井
少し前、Posyをまったく新しく創り変えて、バカラのパーティーでパフォーマンスをやったんですね。歌手と一緒に歌うという。お客さんは400人から500人くらい。僕がよかったと思ったのは、実際に汗水流してネジをはめたりした大田区の職人さんたちも全員そこに招いたんですね。
彼らは自分の創ったものが人に感動を与えていることを初めて知ったんですね。それで彼ら全員、人目もはばからず男泣き。
日本の職人さんとしては、自分の創ったものがどういうふうに人に喜ばれているかを考えるいいきっかけになっていったと思うんです。だから目標をわかりやすく設定して物創りをやっていかなきゃいけないんですね。
- 佐々木
想像しただけで、職人の方々の表情が見えるようです。松井さんご自身が最近すごくワクワクしたとか、興奮したってことはありますか?
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