ホーム > 佐々木かをり対談 win-win > 第130回 山田昌弘さん

130 |
山田昌弘さん
|
|
|
フリーターに起業資金を貸し付けるという制度
- 山田
ちょっと外れちゃいますけど、フリーターを起業させようというようなのが、いろいろとありますけれども、それ無理ですよ。もともと資金もないし、いわゆる人間関係もコネもないし、人間形成力もないし、学力もそれほど恵まれない人がフリーターになっている。
- 佐々木
一番はコミットメントでしょう。
- 山田
私、ある県で、フリーターに起業資金を貸し付けるという制度をやっていた人の話を聞いたら、ほぼ100パーセント失敗するというんです。それで「どういうのがあったんですか?」って聞いたら、そういうフリーターの人がお金を借りて商売を始めると、大概の人はリサイクルショップだというんです。地方なんですけども。リサイクルショップといったって、ノウハウがあるじゃないですか、どこで仕入れて、どこで売ってとか。
完ぺきに、フリーターしかやったことのない素人が、いきなり何百万も貸し付けられて、店を借りて、そこから仕入れて、売ろうっていっても、1年以内に潰れて、こんどは借金を背負ったフリーターになるわけですよ。
- 佐々木
厳しいですね、それ。ビジネスの体験もノウハウもない人が貸し付けているところも悪いんですよね。
- 山田
行政の制度だから、ほとんど審査もせずにハンコを押して、貸して、やらせて、失敗させて、2度ガックリさせるという感じで。審議会でも時々、「正社員になれないなら、起業をしなさい」と発言する人がいるんですけど、それは違うだろうって。
正社員としてノウハウを身につけた人に起業してもらって、空いたところに大企業がフリーターを雇ってもらって、一から訓練してもらうのが正しい形だろうと。フリーターにカネを貸し付けて、起業させるという発想にどうしてなるのかなと。現場感覚がないのかなと思っちゃいますよね。
- 佐々木
本当です。でも大企業も、訓練ばかりはできないでしょうが、だからやはり、そこまで仕事を与えたいなら、フリーターは役所に入っていったらいいですよね。役所の人と互いに学び合えば、すごく刺激的な職場になるでしょう。
- 山田
似たようなことを経験したことがあります。ある官庁の研究会であるリポートをまとめていたときに、年齢採用基準の是正、何歳までという年齢制限を取り払う必要があるという議論になった。私、それこそ、公務員から率先して、年齢基準を緩めなければいけないという意見をして、最初、リポートに入ったのですね。すると突如、偉い人から電話がかかってきて、「それ、公のリポートに書いちゃうと、本当にやらなければならないから」って。「企業や公務員」と書いてあったのを「企業等」じゃいけないですか? って言われて。まあ、入らないよりはマシだから、しょうがないからいいですけどと言いましたが。
- 佐々木
政府のリポートってそういう暗号が含まれているんですよね。私だったら、絶対にひかないで、書いてもらいますけど。
- 山田
公務員や大学の世界が、いわゆる年功序列で、正規と非正規を差別してやっているときに、企業にそれをするなとか採用しろというのは、私はおかしいと思っているんですね。
16/24
|
 |

|
|