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毛利 子来さん
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小児科の教授が好きだったんです
- 佐々木
でも、先生が小児科を選ばれたのは、いつのことですか?
- 毛利
(笑)これはただ、小児科の教授が好きだったんです。良かったんです。他の教授たちは、例えば、患者の供覧といって、症例を見せる。入院している病人をストレッチャーで階段教室に連れてきて、「これが梅毒だ」とか「これが心臓病だ」とか、臨床講義っていうんですけど、やるんですね。僕は、それを見ていられなかったの。「気の毒だな、あの人。見世物にされちゃって」って。
ところが、小児科の教授だけは、最初の臨床講義の時に、婦長さんに「頼む、あの子を連れてきてくれよ」って。で、婦長さんが連れてきたんです、ガラガラッと。すると、「おっ、坊や、来てくれたか。今日はな、こいつら、お兄ちゃんたちが……」って、女の人は一人しかいなかったから、「お兄ちゃんたちが、はしかの勉強をしたがっているから、お前は、はしかだから、見せてやってくれるか?」「うん」「そうか。ありがとう」って。
それで、「ここを開けるけど、いいか?」って、いちいち聞くんですよ。で、「うん」って言ったら、「ありがとう」って。それから、その教授が好きになったんです。
精神科なんかは、ひどかったですよ。今は、だいぶ変わったけどね。本当に妙齢の娘さんを素っ裸にしてパンツまで脱がせて、大勢の男の学生の前で、教授がその女の人をトンと突くんです。そうすると、トントントントン、バタッと倒れる。で、「見たまえ、これがパーキンソンだ」って。「ひどい」って、僕はもう、見ていられなかったから、その場を逃げちゃったんですけどね。そういう教授が多かったんですよ。今はそんなことがないと信じていますけど。
だから、患者取り違え事件とかが起きるんですよ。そんなことは自戒しながらやっていますけど、知らず知らずのうちに、「先生と言われるほどのアホでなし」で(笑)、どういうひどいことをやっているか、自分じゃ気がつかないからな。僕も結構悪いことをしていると思いますよ。
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