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第1回 フジ子・ヘミングさん


第1回 フジ子・ヘミングさん
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きちんと準備をしてお祈りすれば、神様は助けてくれる |
つらいと感じた留学生活をフジ子さんはなぜ続けたのだろう?
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「いろいろつらいことがあっても、日本へ帰らなかったのは、私のピアノを認めてくれる出来事が続いたから。「世界的になれる!」と言われたり、新聞で絶賛されたり、ドイツの政府から奨学金なんていう素敵なものをもらったりしてね。だんだん楽しくなってきたの。「私はすごいんだ!」って、思えた。それと、お祈りがあったから、やってこられたというのもあるわね。また、恋愛の話に戻ってしまうけど、好きな彼を断ち切らなければならないときも、「彼を忘れさせてください」って、レクイエムを聞きながらお祈りをするの。去年、かわいがっていた猫がガンになってしまったときも、お祈りのおかげで、苦しまずに死なせてあげることができた。そう、今日も体調が悪くてつらかったけど、祈りながらピアノを弾いたわ。すると、スーっとつらいことが消えていっちゃう。不思議よ」
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つまり、フジ子さんの“祈り”がすべての行動力につながり、その結果、新たな道を拓く原動力にもなっているのではないか。そのとき私はそう感じた。
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「きちんとしたことをしないと、祈りは効かない。悪いこと、不道徳なことばっかりやっていて、一生懸命祈ったってだめですよ。神様は助けてくれない」
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「普段から、するべきことをする」……それが、チャンスをつかむ準備でもあると、フジ子さんは続けた。
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「たとえば、私はピアノのほかにいつも絵を描いています。ドイツにいる頃から。クリスマスはこの時とばかり、クリスマスカードを描いて、ほうぼうに送ったんですよ。私が凡人じゃないってことを示してやろうと思ってね(笑)。このときにもきっと“自信”が働いていたのね。そしたら、あるとき、ドイツの大学の先生が、「月に一回ある音楽会のプログラムに毎回、絵を描いてほしい」って、言われたのよ! ほんとうにうれしかった! そして、最近は、童話のイラストの依頼が来たり、CDのジャケットの依頼が来たり。ほかの人が描けない私だけの絵を描こうと思っている。やっぱり自信が大事。だれかを真似るんじゃなくて、自分に自信を持つことが」
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とはいえ、ギラギラした過剰な自信は、フジ子さんからみじんも感じられない。その理由は、次の言葉に隠されていた。
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「今の私の人気は、周りが支え、盛り立ててくれたこと。ありがたいことです。でも、私は有名になりたくて、お金持ちになりたくてやっているんじゃないの。私の演奏をみなさんに聴いてほしいだけ。だから、会場がぎっしり詰まってないと嫌ね(笑)。ポスターとかチラシは大事。人目をひくようなものを考えますよ。だけど、それで得る報酬にはこだわらない。私のピアノを聴きにきてくれた人がたくさんいただけで十分。出演料は、ユニセフやアフガニスタン難民のために寄付をしています。あまり、贅沢をしたいとも思わないし。お洋服は好きだけど、思い出のある洋服がたくさんあるし、母のお古もあるし、西田武生さん(デザイナー)が、いっぱいくれるしね」
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